マイナンバー、システム開発段階から混乱続き 振り回された自治体 省庁幹部「よくぞ動いてくれた」

2022年1月31日 06時00分
 マイナンバーの情報連携に欠かせない中間サーバーは、稼働後に自治体から次々と注文が付けられていた。そもそも役所間で情報をやりとりする要のシステムは、開発段階から混乱続き。振り回されたのは現場の自治体のほうだった。(デジタル政策取材班)
 「国から情報が下りてくるのが遅い」「制度が二転三転する」。稼働まで4年がかりの巨大システムの開発には、自治体から不満の声も聞こえる。
 自治体中間サーバーは、情報をやりとりする際のルールである仕様を内閣官房が、ソフトウエアの開発を総務省、ハードウエアの整備や運用を地方公共団体情報システム機構がそれぞれ担った。個人情報を扱うだけに、ひとたびトラブルを起こせば役所の業務がストップしかねない。
 当時の関係者らによると、中間サーバーは出だしからつまずいた。ルールの作成の遅れで、ソフトウエアの開発もずれ込んだ。当時の総務省の担当幹部は「もっと早くしてくれと発破を掛けていた」と明かした。
 やきもきしていたのは自治体も同じだ。中間サーバーにつなぐシステムの開発に着手できないからだ。ルールの遅れについて、神奈川県内の自治体担当者は「国があまりにも自治体業務の現場を知らなすぎた。いったん決まった後も自治体側で検証して、これではダメだとクレームを入れたこともある」と憤る。テストでも狂いが生じた。
 元豊島区情報管理課長で自治体などのITコンサルタントを務める高橋邦夫氏は「先行テストを実施した自治体から『これでは無理だ』との修正要望が多数出て、全体行程に遅れが生じたと、当時、総務省の担当者から聞いた」と明かす。いざ始まった連携テストも「課題を一個一個つぶす感じではなく、相手の自治体に情報が届けばよしというものだった」と振り返る。
 神奈川県内の自治体担当者は「きちんと洗い出せなかった現実はある」と詰めの甘さを感じている。
 結果、中間サーバーが動いてから新たな課題が次々と判明し、機構は23回の契約変更を余儀なくされた。その一つが、情報をやりとりする自治体担当者にDV被害者情報を不開示だと知らせる機能の強化だ。
 情報連携が始まると、自治体から「誤って開示されないよう確実に情報を保護する設定にして」と注文が付いた。東京23区のある職員は「DV被害者情報は命にかかわるので、前々から自治体では慎重に取り扱ってきた。後から改修が必要になったのも国や機構が現場の実情を軽視していたからだ」と指摘する。
 マイナンバー政策に携わった武庫川女子大の金崎健太郎教授は「全国の自治体をつなぐという巨大プロジェクトだったが開発期間は厳しかった。そのため上流の中枢システムから、下流の自治体のシステムまで同時並行で開発するしかなかった」と指摘。その結果、「中流の中間サーバーでは、壁を塗っているときにそこはふすまにしてくれとか、タイルを貼っている時にフローリングで、という話が出てくる」とタイトなスケジュールが契約変更に与えた影響を指摘した。
 試行錯誤の末にできあがった中間サーバー。開発に携わったある省庁幹部はこう語る。「私は、よくぞ動いてくれたと今でも思う」

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