羽生結弦は「人類の宝」 中国でも人気沸騰…国境を超えたファン同士の交流も

2022年1月31日 12時00分

羽生結弦選手の誕生日を祝うファンらのアート作品が公開された中国版ツイッター「ウェイボ」の画面

 【北京=坪井千隼】2月4日の北京冬季五輪開幕が迫ってきた。大会で最も注目されるアスリートの1人が、五輪3連覇が懸かるフィギュアスケート男子の羽生結弦だ。中国でも熱狂的なファンが多く、人気は抜群。ぎくしゃくしがちな日本と中国の両国関係をよそに、国境を越えたファン同士の交流が生まれている。
 「彼の演技は優雅で美しい。氷上では貪欲に高みを目指すが、試合後は純粋でかわいらしい一面をのぞかせる。ギャップがたまらない」。上海の女性ファン、王萱おうけんさん(30)は羽生の魅力を熱く語る。競技会場での応援を考えていたが、新型コロナウイルスの影響で一般向けチケット販売は中止に。それでも「彼は人類の宝。テレビの前で精いっぱい応援する」と語る。
 北京の男子大学生、夏さん(22)は「サッカーファンがメッシやベッカムを応援するような感覚」という。

昨年12月の全日本選手権で演技を終え、あいさつする羽生結弦選手=さいたまスーパーアリーナで

 2020年には、羽生の誕生日に当たる12月7日、中国のファンらがお祝いのアート作品をネット上で公開した。それぞれが各地の地元などで撮影した空の写真1207枚を組み合わせるなどし、氷上の羽生を表現した力作だ。
 日本のファンとの交流も盛んになっている。20年1月下旬、新型コロナの感染拡大で武漢が都市封鎖(ロックダウン)となってすぐに韓国で開かれた四大陸選手権。応援に行けなくなった中国人のファンらが、自分の席を日本や韓国のファンに融通するなどした。王さんは、自身の代わりに日本人のファンに応援に行ってもらった1人だ。「会場で日本のファンと仲良くなり、プレゼントを交換することもある」と話す。
 応援のため何度か日本を訪れるうちに日本への関心が高まり、羽生の出身地、仙台市にある東北大大学院への留学を決めた人もいる。四川省成都の雷さん(23)。現在は修士1年で、新型コロナのため中国からオンライン授業を受ける。
 「私の両親もそうだが、ファン本人の影響を受けて親戚や友人まで羽生選手のことが好きになり、日本に関心を持つようになる。羽生選手を通じ、中日の交流が生まれている」という。
 中国のファンと交流があるという東京都の女性会社員(56)は「国は違っても同じ選手を愛するファン同士で、仲間意識が強い。選手を通じて、日本好きになる人が増えることは、素晴らしいと思う」と語った。

◆こわもて報道局長も歓迎

 羽生の人気に、中国政府関係者も関心を示す。昨年9月、新型コロナ対策で国外からの観客受け入れをしないと発表された際は、日本のファンからインターネット上で「応援は中国のファンに託したい」との声が上がった。これにすかさず反応したのが、日本への強硬な発言を繰り返し、こわもての印象がある中国外務省の華春瑩かしゅんえい報道局長(当時)だ。
 ツイッターで「羽生結弦選手のファンの皆さまへ。お任せください。日本を含む各国選手をしっかり応援します」と日本語で書き込んだ。
 北京五輪を巡っては新疆しんきょうウイグル自治区の人権問題などを理由に米国などが政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」を表明するなど、政治的な緊張が続く。中国政府にとっても、大会の盛り上がりにつながる各国スター選手らの参加は熱烈歓迎のようだ。

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