コロナ飲み薬「モルヌピラビル」 発症から5日以内が条件 高リスクの人、早め受診を

2022年2月1日 08時51分

医師からモルヌピラビルの処方を受ける患者=名古屋市内で

 昨年末から国内で使われ始めた新型コロナウイルス感染症の飲み薬「モルヌピラビル(商品名・ラゲブリオ)」。重症化を抑えるとして期待は大きいが、「発症から五日以内」が投与開始の条件だ。変異株「オミクロン株」の感染急拡大で検査に時間がかかる今、服用が間に合わない恐れが指摘される。処方の対象も限られており、「感染しても飲み薬がある」という油断は禁物だ。 (植木創太)
 「一日二回、四錠ずつを五日間で飲み切ってください」。名古屋市の男性会社員(40)は一月十四日午後、近所の医院でモルヌピラビルの瓶を受け取った。
 十一日に発熱し、検査を受けたのは十三日。この日朝に陽性が判明した。発症から三日で薬を服用することができ、飲み切るころにはすっかり回復した。昨春に続き二度目の感染だったが「自宅で寝ていただけの前回と違い、安心感があった」と振り返る。
 米製薬大手メルク社のモルヌピラビルは、ウイルスの設計図「RNA」をつくる酵素の働きを阻害。ウイルスの増殖を抑えるとされ、同社の臨床試験では入院や死亡のリスクが三割低下した。オミクロン株などの変異株にも同様の効果が見込めるという。国は百六十万人分の購入契約を結び、三月末までに六十万人分を確保する構えだ。
 医療機関や薬局が薬の供給を受けるには、同社日本法人「MSD」の「登録センター」への登録が必要。その上で、患者の発生に応じて必要数を同センターに発注すると、無償で供給が受けられる仕組みだ。これまでに一万五千を超える施設に、六万一千人分以上が届けられた。
 ただ、処方の対象は高齢や肥満、基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人だけ=表。男性は肥満で糖尿病の持病もあった。今回はスムーズだったが、院長(49)が危惧するのは、感染の急拡大による検査態勢の逼迫(ひっぱく)だ。医院では一日数十件のPCR検査を外部に依頼。通常は翌日に結果が届くが、最近は翌々日という。モルヌピラビルの対象となる人を優先するよう要請しているが、今後は「発症から五日以内」を満たせない事態も想定する。
 医院では常に五人分の薬を確保している。しかし、受診した医療機関に在庫がないと配送に時間がかかる恐れも。国はこうした中、感染者の濃厚接触者に発熱などの症状が出た場合、自治体が判断すれば、検査なしでも医師が感染と診断できるとの方針を示した。ただ、厚生労働省の担当者は「薬の処方は検査での陽性確認が大前提」と言う。重篤ではないが、モルヌピラビルの臨床試験では、下痢や頭痛などの副作用が1〜5%の割合で報告されている。
 一月二十五日にあったMSD主催のメディア向け説明会に登壇した国際医療福祉大の松本哲哉主任教授(感染症学)は「飲み薬は重症化を防ぐ手段」とあらためて強調。「重症化リスクのある人は、早めの受診で、できる限り早く検査にたどりついて」と訴えた。

◇モルヌピラビル 主な処方対象

・61歳以上
・活動性のがん患者
・慢性腎臓病がある
・慢性閉塞(へいそく)性肺疾患がある
・肥満(BMI30以上)
・重い心疾患がある
・糖尿病がある
※日本感染症学会「COVID−19に対する薬物治療の考え方」などを基に作成

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