中国政府が北京五輪で「脱炭素」技術アピール 再生エネの覇権狙うも...強引な抑制策で国内混乱

2022年2月4日 12時00分


昨年12月下旬、北京冬季五輪の張家口会場で行われた公開練習で、関係者の交通アクセスを担う燃料電池バス=坪井千隼撮影

 4日午後9時(日本時間)から開会式が開かれる北京冬季五輪で、中国政府は二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラルの五輪」をアピールしている。競技会場では風力発電や燃料電池バスなどを活用。再生可能エネルギーの技術分野で覇権を狙う思惑もにじむが、会場外に目を向ければ、石炭火力に頼らざるを得ないのが現実だ。拙速な政策で停電や生産自粛といった混乱も起きている。(北京・坪井千隼、白山泉)
 「(環境を重視した)グリーンでCO2排出を抑えた、持続可能な五輪にしなければならない」。1月4日、五輪の準備状況を視察した習近平しゅうきんぺい国家主席は、改めて強調した。
 競技会場や選手村で使う電力は、北京に隣接する河北省に建設した風力、太陽光発電所などで賄うという。スケート競技のリンクは最新の冷却システムを使い、排熱の再利用などで電力使用を抑える。選手村などの食器は、トウモロコシなど植物を原料にしている。
 選手らの移送に計1000台以上の燃料電池車を導入。植林を進め、競技会場がある河北省張家口市崇礼すうれい区では、樹木に覆われる土地が6年前と比べ3割増えたという。
 習氏は2020年9月、国連総会で「60年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」を表明。五輪は、国際社会に向けた温暖化対策のショーケースとなりそうだ。
 ただ、スキー、スノーボード競技が行われる張家口市や北京市延慶区は降水量が少ない地域のため、人工雪で会場が整備された。多くの人工降雪機がフル稼働して大量の水と電力が消費され、環境負荷の大きさを指摘する声も出ている。

北京冬季五輪張家口会場のスキージャンプ競技場。五輪関連施設の電力は、風力など再生可能エネルギーで賄うという=坪井千隼撮影

 中国全体のエネルギー消費量の6割は、CO2排出量の多い石炭火力に頼る。中央政府の方針を受け、各地方政府は石炭火力発電所の発電抑制などに動いた。目標を達成しようと、一部では強引ともいえる抑制策が進められ、21年9月には各地で電力不足が深刻化。停電や電力の使用制限で生産停止に追い込まれる工場が相次いだ。
 江蘇省蘇州市では昨年9月末、地元政府から企業に大規模な節電要請が出された。アルミ加工を行う日系企業の経営者は「『工場を止めてくれ』という突然の要請で廃棄しなければならない材料も出た。(応じなければ)営業許可を出さない、という脅しもしょっちゅうだ」と明かす。
 市民生活の混乱や景気への打撃が深刻になり、同10月には李克強りこくきょう首相が、石炭の増産や、停止していた火力発電所の再稼働を指示。当面の電力確保を優先する方針に立ち戻った。
 丸紅中国の鈴木貴元・経済調査チーム長は「中国は五輪を風力や太陽光発電など環境技術を世界に見せつける絶好の機会と考えているだろう。発展途上国などへの輸出増につなげる意味もある」と分析。一方で、今後も国内で電力の供給が不安定化する可能性を指摘し「日本企業も在庫積み増しなどリスクに備える必要があるだろう」と話す。

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