行き場失う「住まいのない人」…コロナ感染疑いでも待機場所なく 脅かされる命と尊厳

2022年2月5日 06時00分

医療相談会で訪れた人の健康状態を確認するボランティアの看護師ら=東京都台東区で(あじいる提供)


 路上生活者やネットカフェで暮らす「住まいのない人」が新型コロナウイルスに感染した場合、宿泊療養や入院をすることになるが、検査で陽性と判明するまでは居場所がない。感染者急増で宿泊療養できない可能性もあり、支援団体からは「国や自治体が責任を持って居場所づくりを」と求める声が出ている。
 「路上生活の人たちはどうしたらいいのか」。住まいや仕事がない人への支援を行う一般社団法人「あじいる」(東京都荒川区)の中村光男さんは心配する。
 都福祉保健局は「保健所や医療機関と連携し、福祉事務所が状況に応じて対応する」と説明するが、中村さんは第5波での経験を踏まえ、「言葉どおりには受け止められない」と指摘する。
 あじいるが昨年8月、台東区内で開いた医療相談会に、腹痛を訴える路上暮らしの70代の男性が訪れた。発熱症状もあり、墨田区内の病院で新型コロナ感染が判明したが、病床逼迫の時期で入院できなかった。院内の片隅で保健所からの療養先調整の連絡を待ったが、夜になってもなしのつぶてだったという。
 中村さんはやむを得ず、車にビニールシートを張る即席の感染防止策をして、男性を関連団体の寮の個室に連れていった。ただし、トイレや洗面所は共用。他の入所者に感染を広げる恐れがあり、寮で療養させられない。福祉事務所に生活保護を申請し、幸い翌日に入院先が決まった。

医療相談会で訪れた人の健康状態を確認するボランティアの医師=東京都台東区で(あじいる提供)

 男性は肺機能が低下しており、リハビリを含めて4カ月間、入院したという。中村さんは「たまたま寮に空きがあって対応できただけ。私たちができることも限界がある」と振り返る。
 「国や自治体が隔離などに責任をもつべきなのに、住まいのない人たちは排除されているんじゃないか」と強調する。
 路上生活者らは健康上の問題を抱える人や高齢者が目立ち、重症化の恐れもある。中村さんは「命と尊厳を守るため、せめて待機や療養ですぐに利用できる緊急シェルターが必要だ」と訴えている。(太田理英子)

◆「東京都は現場に対応丸投げ」

 東京都は生活保護などを担当する自治体の福祉事務所に対し、住まいのない感染者への対応を求めているが、現場からは困惑の声が上がる。
 目黒区の担当者は「待機場所の用意はない」と話す。1月下旬以降、感染した路上生活者2人の相談に応じた新宿区の担当者は「今のところ療養施設へすぐに案内できているが、今後は入れなくなる恐れがある。都に滞在先の用意をお願いしている」と明かした。
 また、住まいのない人の多くが国民健康保険に未加入という問題もある。新型コロナの治療は公費でまかなうが、感染判明までは医療費が必要になる可能性がある。未加入の場合、診察前に、医療費が公費負担となる生活保護の申請を求められる可能性もある。
 都内の路上生活者は約800人。ネットカフェで寝泊まりする「ネットカフェ難民」は約4000人とされる。昨夏以降、都に対応を求めてきた貧困問題に詳しいまちづくりコンサルタント北畠拓也さん(31)は「都は第6波の今も、自治体に丸投げの状態。家がない、保険証がないことを理由に命の危険がある人が放置されてはならない」と指摘する。(山下葉月、中村真暁)

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