<社説>IR推進3地域 慌てる必要は全くない

2022年2月5日 07時53分
 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備に向け、自治体が国に計画の認定を求める申請期限が四月下旬に迫る。建設を目指す大阪府・市と和歌山、長崎両県は資金面などで手続きが難航している。本当に必要なのかに議論を戻し、仕切り直してはどうか。
 IR整備法は、カジノ解禁の条件として、ホテルや会議場、展示場、レクリエーション施設などの併設を求める。二〇一八年の法成立時は、数千億円から一兆円を投じた一大リゾート施設が各地にできれば、インバウンド(訪日観光客)を呼び込む目玉になると期待されたが、新型コロナの感染拡大で目算は大幅に狂った。国が最大三カ所を認定する第一弾の開業見込みは、当初の二〇年代半ばから二〇年代後半にずれ込んだ。
 国への申請は昨年十月に受け付けが始まったが、大阪、和歌山、長崎のいずれも提出に至っていない。申請に先立ち、今年二、三月の地元議会でそれぞれ、海外のカジノ業者などと共に作成した計画案への同意を得る必要があるが、どこも逆風が吹いている。
 和歌山では、反対派が二万筆余の署名を集め、IRの是非を問う住民投票を直接請求。市議会は否決したが、資金調達に苦戦し、公聴会もこれからだ。大阪では、建設予定地の人工島に液状化への懸念が発覚。市が土壌対策として七百九十億円を負担することに反発が広がっている。知事選のさなかにある長崎も、やはり資金面での不安が払拭(ふっしょく)されていない。
 IRは民設民営だが、納付金や入場料の一部が自治体に入る。その年額は府県の資料によると、大阪で七百億円、和歌山で二百四十四億円、長崎で三百億円を見込む。財政難が加速する中、経済波及効果や雇用創出に期待する事情は分かるが、安易に「打ち出の小づち」として頼むのはいかがか。
 ギャンブル依存症につながる懸念、治安悪化やマネーロンダリング(資金洗浄)への危惧も依然、根強く、国民に十分理解が広がったとは言い難い。昨夏の横浜市長選では断固反対の新人が圧勝し、市はIR構想を撤回した。そもそもカジノの創設が観光立国や、日本の魅力を高めることにつながるのか−。社会全体でいま一度、熟考すべきだろう。少なくとも、コロナ禍の収束が見通せぬ今、申請期限に追われて慌てて進めるべき事業でないことは確かだ。

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