日本の陶芸に魅了されたミロ スペインの小村から思い描いた日本の自然美

2022年2月8日 06時00分
<連載・ミロが見た日本㊥>
 荒々しい岩山に見下ろされたバルセロナ近郊の小村ガリファ。ミロはバスとタクシーを乗り継ぎ、美術学校時代の友人で、陶芸家のジュゼップ・リュレンス・アルティガスが山中に構えた工房に通った。

バルセロナ近郊ガリファで、ミロと父が共同制作した陶器を手にするジョアン・ガルディ・アルティガスさん(左)と妻の允子さん=谷悠己撮影

 「ミロは仕事熱心で朝から晩まで工房にいたよ。電気がなかったから、夜はガスランプで手元を照らして作業していた」。10代後半からミロと父の創作の輪に加わっていた息子のジョアン・ガルディ・アルティガス(83)が振り返る。
 絵画作品で有名なミロだが、アルティガス父子とは数百点の陶器を共同で制作した。その様子を撮影した工房内の写真には、壁に日本全国の焼き物産地を記した地図が写り込んでいる。「父もミロも、日本の陶芸に魅せられていた」
 アルティガスは、第2次大戦前後に日本に長期滞在したバルセロナの芸術家を通じ、手作りの日用雑器に美を見いだす「民芸運動」に傾倒。実践者の1人で益子ましこ焼の人間国宝、浜田庄司とは深い親交を結んだ。1970年の大阪万博でガス・パビリオンを彩った陶板壁画などミロ作品の多くを焼き入れした窯は、設計図を提供した浜田がガリファを訪れて開窯かいようした。
◆楊枝入れにも興味 深まる日本への愛情
 窯の壁面には「益子」と漢字の銘板が添えられている。「書いたのは私の妻だよ」。ジョアン・ガルディの隣で、小柄な日本人女性が控えめにほほ笑んだ。
 バルセロナでテキスタイルデザインを学んでいた石川允子まさこ(84)は62年の挙式後ガリファに移り住み、ミロとの共同制作の場に多くの日本産品をもたらした。「焼き鳥屋でもらった素朴な楊枝ようじ入れなんかを興味深げに見ていらっしゃった」と允子は懐かしむ。ミロは後年のインタビューでこう語っている。「マコ(允子)が私の『家族』になってからのこの数年で、日本に対する理解と愛情はさらに深まった」
 ミロはガリファの豊かな自然を愛し、ジョアン・ガルディと連れだっての散歩を日課にした。樹木や花、虫や小石…。立ち止まってはじっくり観察し、時には持ち帰って陶芸のデザインに生かした。益子など日本の陶芸産地に長期滞在した経験のあるジョアン・ガルディは確信する。「ミロはこの村で、日本の自然美を思い描いていたはずだ」
(敬称略)
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 「ミロ展―日本を夢みて」は11日に東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開幕します。

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