攻めてる!防災動画 板橋区、職員が体張って制作配信

2022年2月8日 07時07分
板橋防災プラスチャンネルで手作り動画を配信している板橋区地域防災支援課の職員ら=同区役所で

板橋防災プラスチャンネルで手作り動画を配信している板橋区地域防災支援課の職員ら=同区役所で

  • 板橋防災プラスチャンネルで手作り動画を配信している板橋区地域防災支援課の職員ら=同区役所で
  • <<舞台裏は…>>
防災に関するピクトグラムを職員が全身タイツで演じた動画
  • 「避難場所」を示すピクトグラムを演じた動画の撮影風景を再現する地域防災支援課の職員=板橋区役所で
  • 新入職員が非常袋を作り、成長する物語
  • 人気の「30秒で分かる鼻血の止め方」
  • AEDがある場所の確認を呼び掛ける
  • 備蓄品をラップで紹介
 昨年の東京五輪開会式で話題になった「人間ピクトグラム」を実演したり、ラッパーが備蓄品を紹介したり−。板橋区がネットで展開している動画シリーズ「板橋防災プラスチャンネル」が面白い。楽しみながら防災スキルを学べる内容だが、制作現場をのぞくと、体を張って奮闘する職員たちの姿があった。
 一月下旬、区役所四階にある地域防災支援課横の会議室には、怪しい緑色の全身タイツ男の姿があった。円形に整えられた園芸用ネットの上で、全身タイツ男がかけっこのポーズを取ると、カメラを構えた同課の職員三人が、「腕の角度が甘い」「ひじが下りてきた」と厳しいダメ出しを飛ばした。
 これは、昨年八月に配信されたピクトグラム動画の撮影風景を、取材のために再現してもらったもの。全身タイツ男が「避難所」と「避難場所」のピクトグラムを体で表現し、両者の違いを解説するという内容だが、動画のユルさとは対照的に、現場は思った以上の緊張感だ。
 実際には、納得できるまで四十回ほど撮り直したという。怪しいと思っていた男もタイツを脱ぐと、さわやかな職員の能美徹平さん(31)で、「一回、一回、魂込めて真剣にやってます。でも、『監督』や『アシスタント』がちょっと厳しいですかね」と苦笑い。
 ほかにも、区役所四階から一階にある自動体外式除細動器(AED)を取りに行くには、階段をダッシュするのとエレベーターを使うのとでどちらが早いかを検証したり、新入職員が非常時用の持ち出し袋を作るドラマ仕立ての作品も。「鼻血の止め方」は好評だったという。どれも、まるでバラエティー番組のように気軽に楽しめる。
 これらは、区が二〇二〇年度から推進する「板橋防災プラスプロジェクト」の一環。防災に「楽しい」や「おいしい」といった要素をプラスすることで、身近に感じてもらう試みだ。
 きっかけとなったのは、コロナ禍だった。三密回避のため、地域で防災訓練を開けず、防災意識の普及が困難に。代替策を考える会議で動画配信が提案された。最初の数本は業者に作ってもらったが、経費は限られており、二十、三十代の同課職員を中心に制作が進められた。
 みな動画制作の経験はなかったが、ゲーム実況から猫、料理まで、あらゆるユーチューブ動画を研究。大野雄太さん(30)は、「穴が開くほど見返して勉強しました」と振り返る。キャッチーなタイトルの付け方や、番組開始後すぐに本題に入る展開の速さなどのこつをつかみ、腕に磨きを上げていった。今では全員が制作や編集を手掛けられる。区役所や地域の人から「動画を見たよ」と声を掛けられることも増えた。
 同課の柏田真課長(45)は「防災は『退屈』『堅い』といったイメージが持たれがちで、防災訓練も参加者の固定化が課題だった。興味がなかった人にも、面白さを切り口に関心を持ってもらいたい。今後も配信を続けていく」と意気込む。
 動画はこれまでに約二十本を配信。区ホームページや、動画配信サイトユーチューブの「板橋区公式チャンネル」から視聴できる。
 板橋防災プラスチャンネルは、こちらから。動画の画像は板橋区提供
 文・中村真暁/写真・松崎浩一
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