谷根千アンティーク散歩 歴史刻む名品との出合い求めて 店主たちがマップ作成、28店舗紹介
2022年2月9日 07時04分
台東区谷中、文京区根津・千駄木にまたがる「谷根千(やねせん)」エリア。下町情緒あふれるこの街に、近年は隠れ家のようなアンティーク、ヴィンテージショップがあちこちにできているという。歴史が刻みこまれた名品との出合いを探し、街を歩いた。
◆猫モチーフ輸入雑貨
東京メトロ千代田線の千駄木駅から東に延びる「さんさき坂」を右に曲がると、細い路地の両側に小さなアンティーク宝飾店や東欧民芸品店が並ぶ。ある店のショーウインドーに飾られた、置物の愛らしい猫と目が合った。猫をモチーフにした輸入雑貨店「TIM&SAILOR(ティム・アンド・セイラー)」(谷中二)だ。
店内には一九〇〇年代に「幸運をもたらす」として英国で人気を集めた黒猫のイラストの皿や花瓶、五〇年代以降に作られた猫をあしらったポットなどがずらり。閑静で猫が多い谷中を気に入った代表の漆原靖子さんが三年前に開いた。「英国で買い付けたものが中心で、日本では入手困難なものもあります」
◆ボタン・ギャラリー
さんさき坂を左に曲がった住宅街には、赤れんがの洋館の「Yanaka Red House Button Gallery(ヤナカ・レッドハウス・ボタン・ギャラリー)」(同三)が。アンティークやヴィンテージのボタン数万種が宝飾品のように飾られている。
十八〜十九世紀のボタンのコーナーは、英国の貴族が故人の毛髪を編んで作ったもの、仏革命やナポレオン即位の記念品、鳥の羽根や種を中に入れたガラス製ボタンといった希少品ばかり。オーナーのドリーヴス公美さんは「ボタンは英国などでは美術品のように大切にされてきた。思いや物語が詰まっているんです」と魅力を語る。
お手ごろ価格のボタンもあり、全国からコレクターやアクセサリー作りを趣味とする人が訪れるという。
◆骨董の茶道具
舶来物ではなく、和食器を取りそろえる老舗店も。
谷中霊園近くにある「ギャラリー大久保 瑜伽庵(ゆかあん)」(同六)は、一九一三(大正二)年の創業から江戸期などの茶道具を扱う。安土桃山時代の手鉢は、中に描かれた花が十字形になっており、キリシタン向けに作られたという。
値札を見ると、なかなか手を出しにくいものも…。店主の大久保満さん(65)は「まずは骨董(こっとう)品に親しみを持ってもらいたい」と、店舗二階の茶室で、骨董茶わんで抹茶と和菓子を楽しめるようにしている。
谷根千のアンティークショップの魅力を広めようと、漆原さんらは昨年十二月、二十八店舗を紹介する「谷根千 骨董・アンティーク・ヴィンテージショップ散策マップ」を作成。松坂屋上野店内の上野案内所などで配布し、特設サイトでも掲載する。
コロナ禍の中、地域活性化のために店主たちは奮闘しているという。漆原さんは「知られざる名店もある。古風な街並みを楽しみ、一点ものの宝ものを探して」と呼び掛ける。
「谷根千 骨董・アンティーク・ヴィンテージショップ散策マップ」は、このサイトに掲載されています。ダウンロードもできます
文・太田理英子 写真・池田まみ、太田理英子
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