都立高校入試で初導入「英語スピーキングテスト」 吃音の生徒に不利では…採点に配慮を「内容で評価して」

2022年2月10日 06時00分
 東京都教育委員会が新年度、都立高入試の選抜に初めて導入する英語のスピーキングテストが、話し言葉が滑らかに出てこない「吃音きつおん」の生徒に不利だという指摘が、本紙の「ニュースあなた発」に寄せられた。吃音の子を持つ保護者や専門家らの有志グループは1月下旬、吃音での話し方を減点しないなどを要請する意見書を都教委に提出した。採点時に十分な配慮をするよう求めている。(小松田健一)

 吃音 話し言葉が滑らかに出ない発話障害で、主な症状に同じ音を繰り返す「連発」、言葉を引き伸ばす「伸発」、言葉をうまく出せずに間が空く「難発」がある。9割は、幼児期の発症が多い「発達性吃音」とされる。国立障害者リハビリテーションセンター研究所のホームページによると、発達性吃音の全人口に占める有病率は0.8%程度。

スピーキングテストに向けて専用のタブレット端末を操作し試験に向けて準備する生徒たち

◆話す能力を6段階で評価

 英語のスピーキングテストは都内の公立中学校に通う3年生全員を対象に、11月27日に実施予定。学習指導要領が求める英語4技能「読む、書く、聞く、話す」のうち、「話す能力」の評価を目的とする。成績に応じて、A(20点)〜F(0点)の6段階で評価する。
 ベネッセコーポレーションが問題を作成し、都教委が監修する。
 結果は都立高校受験時の調査書に記載され、調査書点(300点満点)と学力検査の得点(700点満点)、さらにスピーキングテストの20点満点分の合計による総合得点で合否判断される。
 意見書は「『中学校英語スピーキングテスト』を受ける吃音のある生徒への合理的配慮を検討する会」(東京)が提出。同会代表で小学4年の長男(10)が吃音という中村泰介さん(42)は「英語を話す能力は重要だと思うが、採点は公平に行ってほしい」と話す。

◆吃音の症状が減点対象に

 スピーキングテストの採点は、自分の考えを伝える「コミュニケーションの達成度」、文法や語彙ごいの正確さをみる「言語使用」、発音やリズムを評価する「音声」の3分野に分かれる。
 都教委が昨年9月から10月にかけて行った「プレテスト」の音声の採点基準だと、吃音の症状となっている不自然な間や沈黙などが減点対象だったため、同会は生徒が不利になると懸念する。
 プレテストでは吃音がある場合、事前に申請すれば解答時間を3倍に延長する特別措置を受けられた。しかし、実際には生徒や保護者が特別措置の内容を十分理解できなかったり、申請期限に間に合わなかったりした可能性も考えられるという。

◆多感な時期、悩む子多く

 意見書では新年度の実施に当たっては申請日程に余裕をもたせることや、ホームページでの十分な周知を求めた。その上で、吃音によるものとみられる話し方は減点せず、筆談を認めることも要請した。
 当事者からは、配慮を求める声が相次ぐ。同会メンバーで「吃音のある子どもと歩む会」副代表の松本正美さん(51)は「言葉の流暢りゅうちょうさではなく、伝えたい内容を相手に伝えられているかを主眼に評価していただきたい」と訴える。
 NPO法人全国言友会連絡協議会理事長の斉藤圭祐さん(40)も「ふだんは吃音があってもとっさに言葉を言い換えるなどの工夫をできるが、スピーキングテストはそれが通用しない。多感な時期なので自己肯定感を持てなくなる恐れがあり、全人的な評価が必要だ」と指摘する。
 中村さんは吃音について「まだ社会の理解が進んだとは言えず、悩む子どもが多い」と明かす。
 都教委指導企画課の担当者は「吃音がある生徒に対する配慮はプレテストで既に行っているが、次回のテストをどのように実施するかは今後きちんと検討を進めていく」と説明している。

◆吃音の生徒が不利になるとみられる「音声」で減点となる採点基準(昨年実施したプレテストの場合)

・力を測るための十分な量の発話がない
・不自然な間や沈黙が多かったり、話についていくのが難しいほど沈黙が長かったりする。言いよどみが多い
・不自然なところに間や沈黙があったり、不自然に長かったりするが、話についていくことは可能な程度である。言いよどみがある
自らも吃音で、吃音の研究をしている菊池良和・九州大学病院助教(耳鼻咽喉・頭頸部外科)の話
 吃音の程度と語学力には相関関係がなく、スピーキングテストの評価対象となっているコミュニケーション達成度や言語を正しく使用できるかは、筆談でも測ることができる。東京都教委の取り組みは他教委に大きな影響を与えるので、学びの選択肢を狭めないためにも、実施に際しては十分な配慮を求めたい。
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