「あつ森」人気はコロナ禍の癒やしだった? 巣ごもり需要でゲーム市場拡大…はまる人ほど心が不安定に

2022年2月11日 06時00分

任天堂が発表した新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」(左)

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、ゲーム業界にも影響を及ぼした。感染対策のための行動制限が巣ごもり需要を喚起。売り上げ増をもたらした一方、ゲームにはまる人ほど心が不安定な傾向も明らかになった。新変異株オミクロン株の拡大で社会生活での制約が続く中でも、ゲームへの過度な依存を防ぐには身近な人とのコミュニケーションが大切だという。(沢田千秋)

◆社会現象

 日本で唯一のゲーム分野の学術機関とされる立命館大ゲーム研究センター長の中村彰憲教授によると、ゲームの世界市場は2017年以来、毎年20%前後拡大してきたが、20年は32%増加した。
 世界市場の1割を占める日本も同じ傾向だ。家庭用ゲーム機発売などの年は2桁の伸びがあったが、それ以外の年は5%程度。それが20年は一気に17%拡大し、初めて2兆円を突破した。
 中村氏は「かつて、ゲームそのものが社会現象化したことはあったが、新型コロナのように、社会情勢がゲームにこれほどの影響を与えたのは見たことがない」と指摘する。

◆不安感

 20年、国内で最も売れたゲームタイトルは「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」。無人島を創意工夫で発展させて島民と交流し、オンラインで、別のプレーヤーと互いの島の訪問もできる。米国でも「Animal Crossing: New Horizons」の名でヒットし、年間売り上げでトップ3に食い込んだ。
 コロナ禍であつ森は「癒やし」となったのか。あつ森プレーヤー約1000人の孤独、不安感を、米ノーザンコロラド大が研究した。孤独感の強さが表れたのはプレー頻度が高い人で、同大は「あつ森によって孤独感から逃れようとプレー時間が増え、逆に他者からの距離を感じたのでは」と推察。
 また、ゲーム内キャラクターの島民との交流頻度が高い人、隔離期間中の総ゲーム時間が長い人は、不安感が強かった。孤独感、不安感が低い傾向が見られたのは、現実のプレーヤーら島外からの訪問者が多い場合だけだった。同大は「ゲーム時間の増加が孤独、不安感の軽減につながると予測していたが、結果は反対だった」と分析した。

◆防御要因

 「ゲームやインターネットは子どもに親和性が高い。患者の7割は未成年」と話すのは、約10年前からゲーム依存専門外来を設ける国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長。患者はオンラインの対戦型ゲームを好む若い男性が多い。
 コロナ禍前の19年、樋口氏らが厚生労働省補助事業として行った調査では、10~29歳の9000人のうち「無力感や罪の意識、不安を晴らすためにゲームをしたことがあるか」との問いに、2割が「あった」と回答。ゲームで大切な人間関係を危うくしたり失ったりしたとの回答は4.5%あった。
 コロナ禍で若者のゲーム依存は水面下で進んでいるという。樋口氏は「受診控えで患者数に反映されにくいが、明確に増えている」とみる。ゲーム依存に陥るリスク要因は、すぐにゲームができる環境や悪い親子関係、両親の不仲など。
 樋口氏は「ゲーム以外の現実世界の経験、学校での自分の居場所、家庭内の温かい対話など、社会の一員としての充足した生活がゲーム依存の防御要因となる」と呼び掛けた。

関連キーワード


おすすめ情報