90代男性は救急車の中で亡くなった...高齢者施設で集団感染が多発 受け入れ病院見つからず<新型コロナ>

2022年2月11日 06時00分
 東京都などで10日、新型コロナウイルス対応のまん延防止等重点措置の延長が決まった。都内では新規感染者の増加率が少しずつ低くなってきたものの、高齢者施設などで集団感染が多発。重症化した入所者を受け入れる医療機関が見つからず、搬送されないまま死亡するケースもあり、高齢者施設からは「もっと医療的な支援が必要だ」との声が上がる。(土門哲雄)

◆2回接種は終えていたのに…

 「調べれば調べるだけ、陽性者が出た」。22人の集団感染が発生した都内にある高齢者施設の施設長が振り返る。
 1月24日に職員が発熱。その後、80~90代の入所者12人と職員10人の感染が確認された。入所者は個室で暮らすが、同じ階を中心に感染が拡大。ほぼ全員がワクチンを2回接種していたが、3回目はまだだった。

高齢者施設の居室。医師の派遣や入院先確保を求める声が上がっている=施設提供

 入所者は普段から介護が必要で、基礎疾患があり、認知症の人も多い。医師は常駐しておらず、職員の多くが出勤できなくなったため、残された職員だけで朝から晩まで入所者の居室を配膳などに回った。
 「高齢者施設はもともと暮らしの場。検査キットなど医療物資が豊富にあるわけではない」と施設長。保健所や自治体に連絡しても手に入らず、普段から付き合いのある業者に「助けてほしい」と頼み込んで何とか確保した。

◆入院できたのは3人だけ

 感染した入所者は食事や水分を取れず、症状が悪化。だが、入院できたのは3人だけ。肺に疾患があり、濃厚接触者とされた90代男性は酸素濃度が80%台まで低下。救急隊が駆け付けたが、医療機関に受け入れを断られ、約4時間搬送先が決まらず、男性は救急車の中で亡くなった。
 都の入院調整本部から依頼を受けた岩間洋亮医師が28日から施設に入り、PCR検査や、持参した点滴などで治療を開始。入所者の容体は徐々に回復した。だが、抗原検査キットなどの不足は続いている。
 施設長は「物資を手配しようとしても、たらい回しにされ、どこにつなげばいいのか分からなかった。第6波は軽症が多いと言われているが、高齢者は軽症では済まない」と強調する。
 岩間医師は「搬送先も医療従事者に感染が広がって人手が足りず、ベッドは空いていても受け入れられない状態。高齢者施設は疲弊し、80代、90代の入所者はギリギリの状態が続いている。往診の医師の拡充や、点滴など物資の供給が必要だ」と指摘する。

◆感染者と死者が増加

 高齢者施設で感染が広がり、死亡するケースは増えている。都の発表によると、今月1~9日、高齢者施設での感染者は1846人で1日当たり200人以上。同期間に都内で死亡した68人のうち、高齢者施設で感染した人は27人で全体の約4割に上る。
 都医師会の平川博之副会長は「高齢者施設の重症者がスムーズに入院できず、施設でいかに踏ん張れるかという状態になっている。地域の医師会や訪問の医療機関がチームを組んで対応しており、苦しい状況だが、何とかしのいでいきたい」と説明する。

関連キーワード


おすすめ情報

社会の新着

記事一覧