五輪番組字幕の内容は「誤り」とNHKが初めて認める ディレクターら懲戒処分

2022年2月10日 20時22分
 昨年末に放送されたNHKの番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、五輪反対デモの参加者が金銭をもらって動員されたとする裏付けのない字幕が流された問題で、NHKは10日、これまで「不確か」と表現していた字幕の内容について、初めて「誤り」と認める調査報告書を発表した。
 この番組は、五輪公式記録映画で監督を務める河瀬直美さんら撮影スタッフにNHKが密着取材した内容。撮影スタッフの島田角栄さんが匿名の男性をインタビューしている場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕が付けられた。放送後に抗議が殺到したことを受け、NHKが再度事実確認したところ、男性が東京五輪反対デモに参加したかどうかを確認していなかったことが判明した。

◆「五輪反対デモは行かない」という主旨の音声も

 報告書によると、問題の場面が撮影されたのは昨年8月7日で、放送された部分以外には「お金をもらって、いろいろなデモに参加している」「五輪反対デモは行かない」「コロナが増えるから五輪はやめた方がいいと思う」という主旨の音声が撮影素材に残されていた。一方で担当ディレクターは、男性からは「デモに参加することで2000円から4000円をもらうことがある」「五輪反対デモに参加する可能性はある」という話を聞いたと説明。しかし、NHK内部調査チームの聞き取りに対し、男性は「五輪反対デモに行ってみたい、という話をしたと思う」としつつも「8月7日以降も、五輪反対デモには参加していない」と証言したことから、報告書は「男性が五輪デモに参加したという確証は得られなかったため、字幕の内容は誤りだったと判断した」と結論づけた。
 問題となった字幕の場面が撮影された経緯については「五輪に対する多様な声を取り上げたいとして、NHKが取材した約10人の中からディレクターの判断で選択した。この判断に公式記録映画の関係者は一切、関わっていない」と説明。河瀬さんら公式記録映画関係者による字幕への関与をあらためて否定した。
 報告書では、河瀬さんら映画関係者や視聴者に加え、五輪反対デモ参加者にも初めてお詫びする文言が入った。また、番組を制作した大阪放送局のディレクターとチーフプロデューサーを停職1カ月とするなど、計6人を懲戒処分にしたと発表した。

◆「行く可能性がある」だけで「五輪反対デモに参加」に

 報告書によると、最初の番組試写段階での字幕は「かつてホームレスだった男性」「デモにアルバイトで参加していると打ち明けた」だった。チーフプロデューサーはディレクターに対し、字幕が五輪デモを指しているのか確認を求めたというが、ディレクターは男性が五輪反対デモに「行く可能性がある」と思い込んでおり、デモに「参加した」と断定した字幕でなければ問題ないと考えていた。チーフプロデューサーも、どのように確認するか具体的な指示をしなかった。
 ディレクターは問題が発覚するまで男性の連絡先を把握しておらず、男性がどのようなデモに参加する予定かなど、判断材料になる事実関係を詳しく取材していなかった。報告書では「最大の問題は、当該シーンが8月7日に取材したあいまいな情報をもとにしていたにもかかわらず、取材後、放送までの間に、男性に一度も、実際に参加したかどうかを確かめることもなく、誤った字幕を出してしまったこと」と指摘した。

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