ミニシアターの灯消さない 下北沢、地元密着型の新館誕生 池袋、老舗一新「デジアナ上映」

2022年2月11日 07時01分

ミニシアター「シモキタ-エキマエ-シネマ K2」が入る「テフ ラウンジ」。下北沢駅に直結する

 岩波ホールの閉館が決まっても東京のミニシアター文化は不滅だ。若者の聖地・下北沢に新シアターが誕生し、歓楽街の池袋では老舗が最新設備を備えたリニューアルに乗り出した。完全バリアフリーの挑戦も続く。エンタメ業界を苦しめるコロナ下の奮闘を追った。
 地下化された小田急線の線路跡地を整備する「下北線路街」の一角。先月、複合施設「テフ ラウンジ」2階に「シモキタ−エキマエ−シネマ K2」がオープンした。所在地の「北沢2丁目」の頭文字と、世界の屋根・カラコルム山脈の名峰の名前にあやかった。

「K2」の館内

 小劇場やライブハウスが集まり、首都を代表する演劇・音楽の街として知られる下北沢だが「映画」のイメージだけが薄い。一帯の開発を手掛ける小田急電鉄には住民から「映画が地元で見たい」という声が寄せられていた。
 地域密着で「シモキタらしさ」を追求する。本編前には、地元商店街のお菓子屋さんやお茶屋さんが出演した映画鑑賞中のマナーを呼び掛ける動画を流す。運営団体「Incline」の大高健志さんは「映画の後は街に繰り出して」。濱口竜介監督の「偶然と想像」、佐々木想監督の「鈴木さん」を上映している。
 1956年開館の「文芸坐」を総合娯楽企業「マルハン」が受け継ぎ、2000年にオープンした池袋駅東口の「新文芸坐」が、4月15日にリニューアルオープンする。改装のため、先月末から休館に入った。

池袋駅東口の新文芸坐。リニューアルのため現在は休館中

 チケット1枚で2本の映画が楽しめる「2本立て」が売りもの。映画監督や俳優のトークショーのほか、オールナイト上映も行い「古き良き」映画館スタイルを貫いてきた。
 システムをデジタル化した後も映写機を残し、今では貴重な35ミリフィルムの上映館となった。リニューアル後も伝統は守る。新たに導入する高画質な4Kレーザーと、35ミリフィルムの「デジアナ上映」で往年の名作から最新作まで紹介する。

リニューアル後の新文芸坐のロビーイメージ図=新文芸坐提供

 花俟良王(はなまつりょお)マネジャーは「目当てではない作品との出会い、予想外の面白さを発見する喜び…。2本立ての文化の灯は消さない」と意気込んでいる。
 JR田端駅近くの「シネマ・チュプキ・タバタ」は字幕や音声ガイドで耳の聞こえない人や目が見えない人の理解を助ける。障害のあるなしに関わらず誰もが楽しめる「日本初のユニバーサルシアター」だ。2016年9月に開館した。
 全21席。コロナ禍で入場は7割程度の16席に制限している。昨年10月の緊急事態宣言解除後、少しずつ観客が戻り始めた。
 代表の平塚千穂子さん(49)は、コロナ禍が、映画館の存在意義について考えるきっかけになったという。「鑑賞を通じて、そこにいる誰もが会場の空気を共有する。動画配信サービスにはない体験ができる」

「障害のある人、ない人の交流の場所に」と話すシネマ・チュプキ・タバタの平塚千穂子さん

 リアルな出会いが減った時代だ。映画館を交流の場所にしたい。場所が狭いため、以前は監督らに舞台あいさつを依頼するのはためらっていたが、今は積極的に出演を働きかけている。「経営は苦しいが応援してくれる人が増えている。映画館のよさを伝えていきたい」
文・山下葉月、中村真暁、砂上麻子/写真・安江実
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