東京23区 ふるさと納税で540億円超流出 食い止めへ まちを良くする使い道も

2022年2月13日 07時09分

昨年10月に世田谷区が発行した区報

 自分の生まれ故郷や応援したい自治体に寄付する代わりに、所得税や住民税が軽減される「ふるさと納税」。本紙が東京23区にアンケートすると、2021年度は540億円以上が、ふるさと納税によって他自治体に流出したことがわかった。危機感を募らせる区側も魅力的な返礼品をそろえたり、社会的な取り組みをアピールしたりと流出食い止めに懸命だ。
 二十三区でもっとも流出額が大きかった世田谷区。昨年十月に発行した区報にも「70億円が流出!!」と見出しが躍り、「返礼品をもらえるだけの制度ではなく、まちを良くする仕組みです」と紹介する。
 区経営改革・官民連携担当課によると、七十億円は本来の区民税収の十六分の一に相当し、小学校改築二校分にあたる。ふるさと納税による減収は二〇一五年度の二・六億円から拡大の一途をたどる。担当者は「この先、住民サービスが低下する恐れもでてくる」と懸念する。

◆実質全国ワースト

アンケート期間は、1月27日~2月4日。港、文京、江東、目黒、大田、渋谷、中野、足立、葛飾の9区は昨年7月1日時点、世田谷区は9月、練馬区は11月時点の独自集計。その他12区は総務省が公表した統計「2021年度課税における住民税控除額の実績等」(6月1日時点)に基づく。色付きは流出額の多い上位3区

 総務省が昨年六月一日時点で集計した資料でも、世田谷区の流出額は全国五位。ただ、世田谷区よりも上位の横浜、名古屋、大阪、川崎市は地方交付税の交付団体で、国から財源不足を補ってもらえる。これに対し、世田谷を含む二十三区は地方交付税制度の枠外で、流出分を国が補填(てん)してくれない。世田谷区はふるさと納税によって、全国で最も打撃を受けている自治体ともいえる。
 ふるさと納税は、都市部の住民が地方の自治体に寄付する傾向が強く、この状況は各区に共通している。二十三区長でつくる特別区長会は昨年十一月、「看過できない状況」とし、補填策の拡充など制度の見直しを求める要望書を金子恭之総務相宛てに提出した。

◆寄付で難民支援を

ふるさと納税で新しい子どもの遊び場づくりが始まった羽根木プレーパーク=世田谷区で(同区提供)

 ふるさと納税は、返礼品をもらわなければ居住自治体に寄付でき、使い道を指定することができる。世田谷区はこの仕組みを活用し、新型コロナ対策や、子どもの遊び場整備事業などを使途として提示。豊島区もトキワ荘マンガミュージアムへの寄付を盛り込む。

豊島区立トキワ荘マンガミュージアムで再現された漫画家の部屋。事業費の一部に、ふるさと納税の寄付が充てられた=豊島区で

 パラリンピックの難民選手団のホストタウンになった文京区は、姉妹都市のドイツの都市の難民支援を組み込んだ。区の担当者は「難民支援はなかなか浸透しておらず、知ってもらえるチャンスだ」と期待する。

◆返礼品競争参加も

 一方、あえて返礼品競争に乗り出す区も。農産物などの特産品がない渋谷区は、高級ホテルの宿泊券や表参道のフレンチレストランの食事券など体験型の返礼品を用意。長谷部健区長は今月四日の会見で「今まで反対ばかりしていたが、『被害』を減らすことを目的にやりたい」と述べた。
 昨秋から台東区も返礼品を導入して本格参戦。奥浅草にある料亭でのお座敷遊びなど「下町らしさ」を打ち出す。中野区も四月以降、ポータルサイトを増加させ閲覧数を増やす。広報担当者は「流出を食い止めることが最重要課題」と話し、今後、在勤者向けの返礼品として、ジム利用や人間ドックを受けられるサービスなども検討していくという。
 文・山下葉月
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