現代自動車、辛酸舐めた日本に再進出へ EVなど2車種販売「『脱炭素』の意識高まりつつある」

2022年2月14日 12時00分
 韓国の自動車大手「現代ヒョンデ自動車」が、日本の乗用車市場に再び進出する。2001年に日本に初進出したが、販売不振で09年末に撤退する辛酸をなめた。約12年ぶりの挑戦は日韓関係が政治や歴史認識を巡って冷え込む真っただ中。勝算はあるのか。(ソウル・相坂穣)

◆「撤退の痛みを真摯に受け止めてきた」

 初進出した01年当時は日韓関係が良好だった。小渕恵三首相と金大中キムデジュン大統領が1998年に「日韓パートナーシップ宣言」に署名し、交流・協力は拡大。02年に日韓サッカーワールドカップ(W杯)開催、ドラマ「冬のソナタ」で韓流ブームも起きた。

日本市場参入記者発表会にビデオメッセージを寄せる現代自動車の張在勲CEO=東京都千代田区の大手町三井ホールで


 だが、現代自はトヨタなど日本メーカーの牙城を崩せず、撤退までの9年間で販売台数は1万5000台にとどまった。「お客さまの声に耳を傾けられなかった。撤退の痛みを真摯しんしに受け止めてきた」。同社の張在勲チャンジェフン最高経営責任者(CEO)は8日、報道陣に公開したビデオで語り始めた。
 張氏は再挑戦の意義を「全世界で持続可能なモビリティー(移動)を追求する中、日本は多くを学ぶべき場だ。環境問題の解決に向け『脱炭素化』の意識も高まりつつある」と強調した。
 電気自動車(EV)「アイオニック5」(販売価格479万〜589万円)と燃料電池自動車(FCV)「ネッソ」(776万円)の2車種のみを販売。5月から受注し、7月の納車を目指す。

現代自動車の記者発表会で電気自動車のIONIQ5(左)と燃料電池車のNEXO(右)の説明をする占部貴生デザインチーム長(左)と佐藤健シニアプロダクトスペシャリスト=8日、東京都千代田区の大手町三井ホールで

 日本自動車販売協会連合会によると、日本で昨年販売されたEVは約2万1000台で全車販売台数の1%未満にとどまる。EV普及が遅れている日本に、現代自は商機を見いだしているとみられる。

◆手続きはオンライン、シェアカーで貸し出しも

 販売方法も、従来のように全国に販売ディーラーは置かず、契約から納車まで手続きをオンラインのみで一括処理する。IT大手ディー・エヌ・エー系のカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」とも連携。EVなどをシェアカーとして貸し出し、消費者に手軽に試乗してもらう。
 今年下半期には、モデル車の展示や試乗機会を提供する直営施設も横浜市内に開設。全国の自動車整備工場との提携も進め、故障修理などに対応する整備サービス網も構築する。
 現代自は先月、日本法人名も「現代自動車ジャパン」から「現代モビリティジャパン」に変更。従来の自動車メーカーの枠を超え、デジタル技術を活用した移動システムなどを提供する意思も示す。EVなど自動車事業に参入を進める米グーグルやアップルなど巨大IT企業との競合や協業に備えているとの見方もある。

現代自の世界販売 グループの昨年の世界販売台数は約667万台で、海外ではEVなどエコカーの販売が伸びた。聯合ニュースによると、米国での販売台数は、前年比約22%増の約149万台となり、ホンダ(約146万台)を初めて上回った。

   ◇   ◇
 日韓の自動車産業を比較研究してきた愛知大経済学部の李泰王イテワン教授(61)が、現代自動車の日本再進出の背景や可能性を分析した。

◆韓国で組み立て、数週間で納車

韓国ソウルで9日、現代自動車の日本再進出について語る愛知大の李泰王教授=相坂穣撮影


 再進出は、現代自のブランド力をアピールするためで、世界一の成熟市場である日本攻略を狙う。中国で販売が激減し、代わりの市場を探している面もある。
 日本ならオンラインで注文を受け、韓国の工場で組み立てた車を船で運んでも数週間で納車できる。ディーラーへの投資や大量の在庫も不要で、仮に失敗しても、損は小さい。
 日韓には政治問題もあるが、それが原因で車が売れないという単純な話ではない。初進出時は両国関係が良かったが、ディーラーの多くは各地のガソリンスタンドや修理工場が担い、アピールできなかった。
 現代自の工場は生産スピードを重視する。トヨタなど日本メーカーが時間をかけて精巧で高品質な車をつくる考え方とは異なる。日本の産業界が現代自を迎撃するか、共存の道を探るのかという反応にも注目したい。(談)

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