石巻思い つないだ2000枚 被災着物のパッチワーク帰郷

2022年2月15日 07時06分

宮城県石巻市で行われた寄贈式=しおみえりこさん提供

 東日本大震災で被災した宮城県石巻市の着物の端切れを再利用したパッチワーク2000枚が、同市に寄贈された。震災の記憶として残そうと、都内の音楽関係者らが始めた活動には、国内外の延べ46カ国・地域の人が賛同し、作品に思いを込めた。
 石巻市の複合文化施設「マルホンまきあーとテラス」で二日、パッチワークの寄贈式が開かれた。津波で失われた市の文化拠点として約十年ぶりに新設された施設だ。舞台や観客席を埋め尽くした色とりどりのパッチワーク。五十センチ四方の作品は、一つとして同じデザインはない。活動に携わってきた都内の音楽家らがクラシックやオリジナル曲を披露し、作り手の思いを音に乗せた。
 「やっと届けられた。二千枚分の思いが並ぶのは壮観」。企画した立川市の音楽プロデューサーしおみえりこさん(69)はそう語った。震災直後から、子どもたちに楽器を寄付する活動に取り組んできた。その中で、石巻市の呉服店から津波で傷んだ反物を譲り受けた。青梅の湧き水で何度も洗い、音楽家の舞台衣装によみがえらせた。衣装づくりで生じた端切れも「津波の記憶の断片」と感じ、パッチワーク作りを思い付いた。

寄贈するパッチワークの確認作業に携わった参加者たち=立川市で

 全国で被災地支援のチャリティーイベントを開く度にパッチワーク制作を呼び掛け、イタリア、カナダ、モロッコなど国内外から計約二千八百枚が寄せられた。石巻市民からも「地元で受け入れたい」との声が上がり、震災から十一年たって寄贈が実現した。
 故郷・石巻に戻った作品は市内の小、中学、高校へと届けられる。「一人一人が力を合わせれば未来に向かう力になる」と、しおみさん。今後も寄贈を続けたいと、未使用の反物や帯を生かした新たなアート制作も企画中だ。
◆糸操り人形師、山本由也さん(65)=日野市

しおみえりこさん提供

 神の使いや聖霊として描かれる竜は、自身の創作活動においても中心的な存在で人形では10体以上制作してきた。今回は竜の親子を縫い上げ、親子愛やきずなを表現した。青い目には半球状に削った木を使うなど人形作りの技術を生かし、生き生きとした表情に仕上げた。「聖母像から着想を得た。清らかな祈りが伝われば」
◆ドキュメンタリー映画プロデューサー、アントニア・シュウさん(70)=カナダ・バンクーバー在住

しおみえりこさん提供

 台湾出身。故郷の伝統的な花柄を土台に、首元のV字が特徴的なタイワンツキノワグマの親子をモチーフにした。クマのV字部分が石巻の端切れ。クマで囲われた空間は台湾本島をかたどっている。「コロナ禍で日本に入れず残念。2、3年後になっても石巻に足を運びたい」
◆会社員、岡田百合さん(48)=群馬県館林市
 緑色の布は触るだけで破れるほど傷みが激しかった。傷んだ部分を柔らかな白色レースやリボンで覆い、人々の心のつながりを表現。あえて覆いきらずに残したのは、被災者の心の痛みに重なって見えたから。「心の痛みは消えない。存在を無視しないで分かち合いたい」。赤い布や金色のボタンは太陽や星をイメージし、希望も表現した。
◆会社役員、武本知子さん(76)=立川市

しおみえりこさん提供

 人づてに聞いた被災者の経験を描いた。海近くの建物に避難した夜、かがり火をたいた船が建物に近づいてきた。助けを求めたが建物にとどまるように言われ、船は消えたという。「不思議な話だけど、船は魂を救いに来たのかも」。作品の中の火には、犠牲者への鎮魂が込められた。
 文と写真・佐々木香理
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