頭頸部がん 保険適用1年 「光免疫療法」手探り続く 患者ら期待 副作用検証を

2022年2月15日 10時01分
 光の作用でがん細胞を破壊する「光免疫療法」が公的医療保険の適用になって、1年余り。従来の治療ができない頭頸(とうけい)部がん患者を対象に、全国約40の病院で実施が可能になった。世界に先駆けて承認され、新しい治療法として期待する患者は多い。一方で、患部の痛みなどの副作用の報告もあり、医師らは「治療には慎重な判断が必要」と話す。 (細川暁子)
 頭頸部がんは、口の中や喉、顔や首などに発生するがんの総称。光免疫療法はそのうち、再発するなどして手術ができない、放射線治療などの標準治療もできない患者が対象だ。
 治療は、がん細胞と結びつく抗体と光に反応する色素「IR700」を組み合わせた薬剤「アキャルックス」を、二時間以上かけて点滴で投与する。約二十四時間後、抗体ががん細胞にくっついたところでレーザー光を当てると、IR700が反応し、がん細胞を破壊する。
 効果が不十分な場合は四週間以上あけ、最大四回まで保険適用で受けられる。所得や年齢に応じて患者の自己負担に上限を設ける高額療養費制度を使えば、月数万〜数十万円程度だ。
 厚生労働省が楽天メディカル(東京)に対し、アキャルックスの製造販売を承認したのは二〇二〇年九月。最終段階の第三相治験の結果が出る前で、安全性や有効性など必要な調査を続ける条件付きだった。同十一月には保険適用になったが、第三相治験は海外で続けられている。
 同社によると昨年末までに、全国で約四十回が実施された。神戸大病院で昨年十二月、光免疫療法を一回受けた七十代の女性は二〇年春ごろに、中咽頭がんと診断された。放射線と抗がん剤治療を受けたが再発。舌根に腫瘍ができ、手術で切除すると発声ができなくなる可能性があった。
 同病院耳鼻咽喉・頭頸部外科特命准教授の四宮弘隆さん(40)は「他に手だてがなく、光免疫療法を実施した」と話す。治療後、がんは縮小したが喉の腫れや痛みがあり、一時はチューブで栄養を取っていた。現在は、会話も食事もできているという。
 一方で、昨年五月以降、同病院で計三回の光免疫療法を受けた七十代男性は、病状が悪化した。一回目の照射後には、ほほにある腫瘍の約七割が壊死(えし)していることが確認できたものの、三回目を終えた後、腫瘍が急速に大きくなったという。
 海外で三十人を対象に実施された第二相治験では、四人(13・3%)でがんが完全に消失。九人(30・0%)でがんが縮小した。しかし、治験と関連がある重篤な有害事象として、三人に痛みや気道閉塞(へいそく)なども報告されている。四宮さんは「症例数が少ない中で、治療は手探りの状況。光を当てる量など分からないことも多い」と言う。
 愛知県がんセンターでは今年一月までに七人の患者に実施。いずれもがんの縮小が確認され、二人でがんが完全に消えた。ただ、頭頸部外科部長の花井信広さん(51)は「治療後に痛みを訴える患者は多い」と指摘。アキャルックスは光に反応する色素を含むため、皮膚が赤くなったり痛みが出たりしないよう、治療後しばらくは直射日光を避ける必要もある。花井さんは「各病院で情報を共有し、治療後の検証を進めることが重要」と話す。

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