相手国領空での爆撃「排除しない」 敵基地攻撃能力を巡り岸防衛相が明言

2022年2月17日 06時00分
 岸信夫防衛相は16日の衆院予算委員会分科会で、政府が保有を検討する敵基地攻撃能力を巡り、自衛隊機が他国領空に入って軍事拠点を爆撃し、ミサイル発射を阻止する手段を持つことを「排除しない」と明言した。政府はこれまで、憲法に基づく専守防衛の考え方を踏まえ、海外での武力行使に極めて慎重な姿勢を示してきた。専門家は、安全保障環境の悪化を理由に打撃力の強化を含めた任務の範囲が「なし崩し」で拡大することに懸念を示す。(川田篤志)

◆武力行使への装備導入も検討か

 立憲民主党の長妻昭氏が、自衛権発動の要件を満たせば「相手国の領空内にわが国の戦闘機が入って爆弾を落とすことも選択肢として排除しないか」と質問したのに答えた。
 岸氏は、武力行使の目的で自衛隊を他国領域に送る「海外派兵」は憲法上許されないとする一方、「攻撃を防ぐ場合にやむを得ない必要最小限度の措置で、基地をたたくことは自衛の範囲内に含まれる」と従来の政府見解を説明。年末に予定する国家安全保障戦略などの改定にあたり、他国領域で武力行使できる敵基地攻撃の装備導入も検討課題になるとの認識を示した。大陸間弾道ミサイルや攻撃型空母など「攻撃的兵器」の保有は否定した。
 松野博一官房長官は16日の記者会見で、岸氏の答弁について「憲法と国際法の範囲内で、日米の基本的な役割分担を維持する前提の下、あらゆる選択肢を排除しないとの趣旨だ」と説明。他国領域内の武力行使でも、憲法が禁じる海外派兵や国際法違反の先制攻撃には該当せず、日本防衛のための打撃力を主に米軍に委ねることに変わりないと強調した。

◆専守防衛を逸脱 軍事大国化の懸念

 政府は、武力行使を伴う自衛隊の海外活動に関して、これまでも例外的に認められる場合があると説明。しかし、イランとオマーンに挟まれて公海がわずかな「ホルムズ海峡での機雷掃海」以外は念頭にないなどと、極めて限定的に解釈してきた。
 敵基地攻撃能力の保有に伴い、海外への派遣を前提とした防衛戦略が策定されれば、「他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」という防衛政策の基本理念の根幹にかかわる。
 元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は本紙の取材に、2015年の安全保障関連法の成立で集団的自衛権の行使が可能となり、自衛隊が海外で活動する制約がなくなったと指摘。「敵基地攻撃能力を持ち、打撃力の一部を担う以上、日米の役割分担が変わらないことはあり得ない。非常になし崩し的で、政府は専守防衛と言い続けているが、論理的に持たなくなっている」と話した。

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