バス運転手らの過労防止策 休息「最低9時間」案に審議会で異論、結論を先送り 国際基準より大幅に短く

2022年2月18日 06時00分
 バスなど運輸業界で働く運転手の過労防止策を議論する厚生労働省労働政策審議会は17日、作業部会を開いた。勤務終了から翌朝の始業までの休息時間を「最低9時間」とする同省の案に、委員の一部から異論が出て結論を先送りした。厚労省案は国際基準の「11時間」より大幅に短いことが問題視された。日本労働弁護団も同日、厚労省案に反対する声明を発表した。(池尾伸一)
 現在の休息時間は1989年の告示で「最低8時間」と定められる。だが、運転手の過労や睡眠不足による事故が増え、厚労省は見直しに着手。通勤や食事時間も考慮し最低11時間とする案をいったんは提出したが、経営側の反対を受け「9時間案」に修正した。
 作業部会では、公衆衛生学が専門の小田切優子・東京医大講師が「運転手を守るのは国民の安全を守るということ」と指摘。「休息時間が11時間を切ると睡眠は6時間を下回る人が多いとの実態調査からしても、11時間は重要」と休息時間の拡大を主張した。
 作業部会は、業界代表と労働組合代表に加え、国民の利益を代表する公益委員の3者計6人で構成される。小田切氏は公益委員。バス業界の経営者代表と労組代表は同案を基本的に受け入れる考えを示している。
 一方、日本労働弁護団は声明で、厚労省案について「脳や心臓疾患を引き起こすリスクを容認する」として、「バス、タクシー、トラックいずれの業種も休息時間は11時間とするべきだ」と求めた。
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◆睡眠5時間足らずで「ぼーっとする」運転手の不安

 厚生労働省がバスなどの運転手の休息時間の基準を「9時間」とする案に対し、現役の運転手から不安の声が上がった。睡眠5時間未満という過酷な状況で運行している実態を明かし、「現状の休息8時間からわずかに改善するだけでは、安心して運転できない」と訴えた。(畑間香織)
 都内で路線バスを運転する大手バス会社の50代男性が、最近1週間の勤務状況を証言した。ある週の1日目は正午に始業し午後10時すぎに終業。1時間以上かけて帰宅し、入浴後の翌午前零時すぎに就寝した。同4時半には起床し5時ごろに自宅を出て、2日目の始業は6時半。この間の休息時間は約8.5時間で、睡眠時間に充てられたのは5時間にも満たない。「寝不足でぼーっとすることは、よくある」と漏らした。
 過酷なのはこの日だけではない。男性が9時間前後の休息時間だったのは、週5日勤務のうち3日に及ぶ。「翌朝が勤務の日は神経が高ぶってリラックスできない」といい、勤務日は家族と直接話す時間もほぼ無い。バスの事故が報道されるたびに「ひとごとではない」と感じていた。
 厚労省が男性のようなバスの運転手を対象に実施したアンケートでも、睡眠時間が「5時間以下」と答えた人は半数近い48.6%に上っている。
 男性は作業部会で9時間案が示されたことへの疑問が拭えない。「多少前進しても今とあまり変わらない。なぜ日本だけが遅れているのか。(国際基準の)休息11時間で運行の計画を組めるように考えてほしい」

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