札幌五輪 市の意向調査は何のため? 招致前提、反対が上回っても「議論の参考」扱いに

2022年2月21日 06時00分
 札幌市が2030年五輪招致の賛否を問い、今年3月に行う意向調査(アンケート)に疑問が呈されている。結果は「参考」という位置付けで、仮に反対が上回っても、それだけで招致撤回はしないというのだ。最近は住民投票などで撤退を決める都市も多いが、札幌はあくまで突き進む構え。民意が生かされない手法に、「何のための調査なのか」という声も上がっている。(特報部・木原育子、中山岳)

◆住民投票も否定

 「東京大会があって状況も変わって…と言いますか、五輪の考え方も変わっているかもしれない。そういう中で市民、道民の皆さんの意向を把握していく」
 17日に定例会見した札幌市の秋元克広市長。「意向調査の意味合いが知りたい」との質問に、「市民の意向確認」と述べ、冒頭の言葉を続けた。
 招致への支持が半数を下回った場合はどうするのか。そう問われると、「計画案を一部修正するとか追加をする」としつつ、「市民との対話を続けていきたい」と述べ、招致は撤回しない考えを繰り返した。
 「調査結果いかんで、招致を進めるか否かの判断は変わらないのか」「反対意見が非常に多かった場合は…」と質問が続いても、「世論調査で市政の政策について市民にお伺いをしているが、あのような世論調査的な位置付け」などとかわす。あくまで「議論の参考にする」という言い方で、住民投票も否定した。
 そもそもどんな調査なのか。市によると、1万7500人を対象に3月上旬から中旬に実施。無作為抽出の市民を対象にした郵送調査と、市内外の人が対象のインターネット調査、大型映画館などでの街頭調査の3種類で行う。招致への賛否やその理由に加え、市が大会概要案で示した開催意義や経費への考えも聞く。

◆市、感染症のリスクは具体的に聞かない方針

 市は、26年大会招致の時も14年に市民アンケートを実施している。だが、東京五輪を経験した今は状況が違う。
 設問に、新型コロナウイルスなど感染症のリスクは入れるのか。市招致推進部調整課の北川雄次郎課長は「感染症という言葉ではなく、『不測の事態』という言葉にして聞く」と説明した。東京大会では開催都市に中止権限がない不平等とも取れる契約内容も露見したが、設問に含めるかは「差し控えさせていただきたい」の一点張りだった。
 五輪についての市民の意見は拮抗している。北海道新聞がコロナ禍の昨年4月に18歳以上の札幌市民を対象に行った世論調査では、招致反対が50%に達し、賛成の48%を上回った。20年4月の調査と比べ、反対は7ポイント増えている。

◆北京五輪直後の調査「世論づくり以外の何ものでもない」

北京冬季五輪の閉会式に参加する日本選手団

 にもかかわらず「開催ありき」とも取れる姿勢は随所に。今月16日の市議会特別委では、元五輪代表や指導者を招き、五輪の意義を話す機会をもうけた。同日は、札幌市出身の歌手大黒摩季さんが市長を訪問。「私は絶対に開催した方がいいと思います」と書かれたメッセージを受け取った市長が「すばらしい応援」と絶賛するなど、招致の機運醸成に躍起だ。
 札幌学院大の川原茂雄教授(教育学)は「意向調査ではなく、世論づくり以外の何ものでもない。見え見えです」とあきれる。
 「東京五輪直後に実施すれば、反対の意見がもっと高まっただろうが、できなかったのだろう。選手たちの奮闘が毎日伝えられる北京五輪直後に調査すれば、数字は盛り上がる」と調査時期にも疑問を投げ掛け、憤る。「反対が多数を占めても招致撤回がないなら、何のための調査なのか」
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