<熱海土石流>土地の元所有者が取材で語った言葉「自分は信じてた」 被害者遺族は「保身ばかり」と反論

2022年2月22日 11時24分
 昨年7月に静岡県熱海市伊豆山いずさん地区で起きた土石流災害。その起点になった盛り土を含む土地の元所有者で、神奈川県小田原市の不動産管理会社元代表(71)が本紙の取材に応じた。元代表は「盛り土をしたのは別の業者」と主張し、崩れた要因を「現土地所有者の管理」などとした上で「行政が長年放置した」と指摘。被害者遺族は「原因をつくったのは元代表だ」と反論する。(塚田真裕、三沢聖太郎)

土石流災害と盛り土について見解を述べる不動産管理会社元代表

 元代表は2006年9月、現地一帯の土地を別荘地造成の目的で購入した。「別の現場で出た土砂を搬入するため」に、熱海市への盛り土造成の申請を部下に指示したとした上で「申請者は私だが、埋めた実行者はうちから借地した別の業者だ」と説明した。
 市への申請では、搬入する土砂の量を「3万6000立方メートル」としていたが、県の推定では崩落部分も含めた盛り土の総量は7万立方メートルに及ぶ。土砂の量が超過していたことを「自分は届け出の内容を信じていた。もし違反があったとしても、自分は認識していない」との見解を示した。
 元代表は、盛り土のあった土地を11年2月に現所有者に売却している。災害の発生原因については「現所有者の管理と、他の多くの要因」が重なったとみる。責任の所在は「私が決めることでない」としつつも、現所有者には土地を「未完成物件」と説明して安価で売却したことを明かし、「所有権移転後、盛り土付近で開発行為があった。行政は盛り土を長年、放置した」と主張した。
 災害発生から7カ月半がたつが、元代表はいまだ公の場で説明はしていない。被災者や遺族に対しては「亡くなられた方のご冥福をお祈りし、ご遺族のご心中をお察しいたします」とする一方、「原因が断定できておらず、非常に複雑な思い」とも話した。

◆被害者の会会長「元代表としての責任は」

 不動産管理会社元代表が盛り土の違反状態を「認識していなかった」と主張したことについて、土石流災害で母親を亡くし「熱海市盛り土流出事故被害者の会」の会長を務める瀬下せしも雄史さん(54)は「保身の言葉ばかりだと感じる。仮に報告を受けていなかったとしても、土地を所有していた会社の元代表としての責任はないのか」と述べた。
 瀬下さんは「『これまでは崩れなかったから安全』だというが、原因をつくったのは元代表だ。『原因は別にあるから自分は悪くない』との論法は通じない」と語気を強めた。
 一方、静岡県の難波喬司たかし副知事は取材に「条例に基づく盛り土造成の申請者は元代表だ。施工は別の業者が実行したのだとしても、造成の責任は元代表にある」との見解を示した。
 また元代表の「土地は10年前売却し、管理責任は現所有者にある」との主張には「元代表から熱海市に、盛り土申請の完了届が出ていない。工期が切れているだけの状態だ」と指摘。完了届に加え、現所有者からの申請もないため「権利義務は現所有者に継承されていない。元代表には今も、盛り土造成の申請者としての責任がある」と述べた。

 静岡県熱海市の土石流災害 2021年7月3日午前10時半ごろ同市伊豆山で発生。災害関連死の1人を含め27人が亡くなり、今も1人が行方不明。市によると、住宅などの建物被害は136棟で、うち54棟が流失。100世帯以上が市内外の公営住宅など応急仮設住宅へ転居し、生活再建を進めている。起点部で不適切に造成された盛り土が被害を甚大化させたとされ、遺族らは「人災」と主張。盛り土があった土地の現旧所有者らを刑事告訴したり、損害賠償を求めて提訴したりした。

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