マルクス主義?左派的?「こども基本法」に自民党保守派が異論を唱えるワケ

2022年2月22日 17時00分
 児童虐待やいじめ、貧困、ブラック校則など子どもを取り巻く環境が悪化しているのを受け、教育関係者らが制定を強く求めている「こども基本法」をめぐり、自民党保守派が「マルクス主義思想」「左派的」などと異論を唱え、議員立法の動きに待ったがかかっている。本来は、日本も批准している子どもの権利条約に沿った国内法整備の一環のはずだが、保守派はなぜこんな異論を唱えるのか。(特報部・荒井六貴、木原育子)

昨年4月、国会の院内集会でこども基本法の必要性を訴える子どもたち=東京都千代田区で

◆家族を否定するような行き過ぎた思想…

「マルクス主義の中には、個人主義を重視しすぎ、家族を否定するような行き過ぎた思想が一部にある。そういうものが入ってくる可能性があり、日本の伝統的な家族観が破壊されかねない懸念がある」
 「こども基本法」について、自民党の城内実衆院議員は21日、特報部の取材にそう答えた。
 城内氏は同党が4日に開いた「『こども・若者』輝く未来実現会議」に出席し、異論を唱えたと報道されていたため、発言の真意を確認した。城内氏によると、その前の発言者が「基本法はいらない。マルクス主義の巣窟になる」と話したため、それを「マイルドにした」という。「子どもの人権を否定するわけではない。慎重にやるべきだ」と説明する。
 一方、会合では元拉致問題担当相の山谷えり子参院議員も「左派の考え方だ。恣意的運用や暴走の心配があり、誤った子ども中心主義にならないか」と発言したと報じられた。特報部は山谷氏の事務所にも取材を申し込んだが、多忙を理由に回答を得られなかった。

◆法制化の柱は第三者機関「こどもコミッショナー」の創設

 こども基本法は、1994年の「国連子どもの権利条約」批准以来、法制化の必要が指摘されてきた。近年、家庭内の虐待やいじめの報告が急増していることから、法案策定に向けた議論が活発化している。
 2020年9月には、子どもの貧困問題などに取り組んできた日本財団が法制定を目指し、有識者の意見を踏まえ取りまとめた提言書を発表。この法律の大きな柱となるのが、第三者機関「こどもコミッショナー」の創設だ。いじめや虐待対策のチェック機能や政策提言を行い、国への勧告権を持たせることなどを想定。国会での議論では、政府の外局として、原子力規制委員会のような国家行政組織法の三条委員会とすることも検討されている。コミッショナーは行政機関に対する調査権を持ち、勧告された機関は報告義務を負い、国会に対し政策提言もできるとしている。

◆コミッショナーは、子どもの最後の砦。命を守るもの

 一方、政府は今国会で、こども関連施策の司令塔になる「こども家庭庁」を設置するための法案成立を目指す。こども基本法との整合性はどうなるのか。
 日本財団公益事業部の高橋恵里子部長は「法の理念を政策で実現する本部になることが、こども家庭庁に期待される。コミッショナーは庁から独立した組織で目に届かない政策を提言できる」と紹介する。
 だが、法案制定を進める山田太郎参院議員(自民)によれば、保守系議員らが特に問題視するのがこのコミッショナー制度で、山田氏らは創設具体化は先送りし、検討事項に盛り込みたいとしているが、それでさえ抵抗もあるという。「例えば、北海道・旭川のいじめ事件のように学校の対処が失敗し、被害者側と利害関係になった時や、教育委員会が機能不全になった時に、コミッショナーが関与できる。子どもにとって最後の砦。保守派には、子どもの権利をうたうだけで反対する人もいる。子どものわがままを聞くと誤解されるが、命を守るためのものだ」と訴える。
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