マルクス主義?左派的?「こども基本法」に自民党保守派が異論を唱えるワケ

2022年2月22日 17時00分

基本法成立に危機感を持ち、18日に会見した末冨教授や室橋さんら(こども基本法の成立を求めるPT提供)=東京都千代田区で

◆何か陰謀論に近いような議論…子どもの視点からはずれている

 こうした自民党保守派の反対論に対し、「困惑したとしか言いようがない」と苦笑するのは日本大学文理学部の末冨芳教授(教育行政学)。「これから何重もの議論が必要なことでもあり、一体何を懸念しているのか」
 末冨さんら有識者や市民団体らは18日、危機感を持ち、こども基本法の実現を求め、急きょ記者会見を開いた。「マルクス主義とか左派的とか…。何か陰謀論に近いような議論もあって、子どもの視点からはずれている。こどもコミッショナーは一足飛びではいかない課題で、ここから丁寧な議論が必要になる。根幹に関わる大事な時に、右か左かの議論ではないはず」
 末冨さんとともに会見した「日本若者協議会」の室橋祐貴代表理事(33)も「左派的って何なのか。よくわからない表現。コミッショナー制度は欧州を中心に多くの国ですでに進められている。もしその『左派的』というのが問題なら、世界ですでに課題となっているはずだが、聞いたことがない」と話す。
 協議会は、若者の声を政治に反映させるために結成され、メンバーは700人以上。室橋さんは「子どもの視点を重視するこの法案の重要性がどこまで共有できているのか、本当に心配になった」と話す。

◆子どもの権利条約批准から約30年 虐待やいじめ…遅れた法制化

 そもそも、こども基本法は日本も批准した子どもの権利条約に基づく国内法整備の一環だ。認定NPO法人・国際子ども権利センター代表理事で、文京学院大の甲斐田万智子教授は「1994年に条約に批准した際、子どもに対する考え方を180度変え、子どもを権利の主体とみなし、子どもの権利を学校で教育しなければならなかったのに、日本は30年近く普及活動をきちんとしてこなかった」と指摘する。
 国連子どもの権利委員会から度重なる勧告を受けても法整備への重い腰は上げなかった。「子どもの時に、大切にされる権利があることや、意見表明権を教えてもらっていないため、虐待やいじめ、体罰、貧困などの問題のさなかにいても、相談したり訴えたりすることができず、一人で苦しむことも多い」と甲斐田さんは憤る。

◆思想的な右左の対立に関わっているほど現場に余裕はない 本質的な議論を

 むしろ遅すぎる「こども基本法」なのだが、自民党保守派はなぜ反対なのか。
 政治ジャーナリストの角谷浩一さんは「子どもたちにすくすく育ってもらうことに、本来イデオロギーなんてない。マルクス主義という言葉の意味を本当にわかっているのか」と話す。2001年12月に敬宮愛子さまが生まれた際、お祝いの意を表する「賀詞」を共産党を含めた全会一致で議決したことを挙げ、「それが原点ではないのか。保守派の自民党が明治日本的な『イエ』制度にこだわり、反共思想を打ち出し、保守層の支持を集めようということなら、とんでもない話だ」と指摘した。
 全国こども福祉センター(名古屋市)の荒井和樹理事長(39)は「そのような思想的な右左の対立に関わっているほど現場に余裕はないんです」と言う。繁華街で徘徊する子どもたちへの声掛け活動を担ってきた。
 荒井さんは「子どもたちが自分の意見を本当に言えているかといえば、ノーだ。子どもが主役になれる場はアイドル活動ぐらいで、それもまた大人の論理で搾取されている。夜の街に漂うのは権利が尊重されず、行き場をなくした子どもたちばかりだ」と指摘した上で、こう話す。
 「本質的な議論をしてほしい。ギリギリのところで踏みとどまっている子どもは想像以上に多い。政治家のみなさんに、その声が届いていますか」

◆デスクメモ

 これだけ子どもをめぐる問題が多く起きている中で、何か手を打たなければならないことは、国民誰もが理解しているのではないか。今すぐ必要で具体的な子ども支援のあり方を、政治家同士が知恵を絞って、政策として実現させてもらいたい。イデオロギーも与野党の壁も不要だ。(歩)
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