命守る浮くリュック 日常でも使える防災グッズ 区域7割が海抜ゼロの江戸川区民の声から着想

2022年2月24日 07時05分

「ビートボード」を抱えて体を浮かせる実験の様子=三和商事提供

 押し入れなどにしまい込まず、日常でも使いこなせる防災グッズを−。江戸川区などで防災用品専門店を開く「三和商事」(千葉県市川市)は、水害時に救命用具になる「浮くリュックサック」を開発した。同区は区域の7割が海抜ゼロメートル地帯。水害リスクを懸念する住民の声から生まれた防災グッズだ。
 同社が第一弾として昨年四月に販売を始めた「ビートボード」(容量三十リットル、二万千七百八十円)は、ボックス型のリュック。防水性の高い生地とファスナーを使っているため、中にパソコンなどを入れても雨や水にぬれない。収納部分に浮力材が入っており、体重一〇〇キロ未満の人であれば、リュックを抱えて水中で浮くことができるという。

江戸川区民の声から生まれた、防水と高浮力を兼ね備えたリュック「ビートボード」=千葉県市川市の防災ファーム市川行徳店で

 底部分のファスナーを開くと、小さなバルブが現れる。浮力材を取り出して収納部分に水をためれば、給水タンクとしても使える仕組みだ。広報担当の大西紀子さんは「通勤用に使えるデザインで、アウトドアでも活躍する。給水に使う場合、背負えるので女性でも運びやすい」とPRする。

底部にバルブがあり、給水タンクとしても使える=三和商事提供

 同社はもともと、千葉県浦安市や船橋市周辺のベイエリアの公立学校向けに実験器具や保健衛生用品の製造販売をしてきた。防災用品も手掛けるようになったきっかけは、二〇一一年の東日本大震災だった。
 社員の有志は震災発生後から毎年、津波で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市でのボランティア活動に参加。被災者と接する中で、水中で浮く防災用品の必要性を感じ始めたという。さらに一九年、同社が江戸川区中央で防災用品店「防災ファーム」を開くと、住民から水害に特化したグッズを求められるように。「防災用品は家に置きがちだが、家で被災するとは限らない。身近に持つことはできないか」。社員らはアイデアを出し合い、浮くリュックの開発を決めた。
 第一弾のビートボードに続き、女性向けの「ビートライト」(容量十五リットル、一万四千八百五十円)、子ども向けの「ビートキューブ」(同十リットル、二万五千円)も相次いで商品化。

ども向けの浮くリュック「ビートキューブ」の実験の様子。顔が水につからないように立ち泳ぎしやすい仕組みになっている=三和商事提供

「ビートキューブ」の中はこんな感じ。通学バッグとして普段使いできる=防災ファーム市川行徳店で

 ビートライトは中の浮力材を取り出せば赤ちゃんのおむつ替え用のマットになり、マザーズバッグとして普段使いできる。ビートキューブは両脇に収納されている浮力材を引き出し、体の前で固定すれば救命胴衣代わりに。大西さんは「顔を水につけるとパニックになってしまう子どもがいるはず。立ち泳ぎがしやすいよう工夫した」という。
 浮くリュックは、江戸川区と市川市香取の「防災ファーム」二店舗のほか、同社のオンラインショップで販売中。浮く災害救助工具セットや、バケツとして使える撥水(はっすい)トートバッグなどのアイデア商品も扱う。

災害救助のための工具が詰まった「ビートレスキュー」。水に浮き、背負うためのベルトもついている=防災ファーム市川行徳店で

 「災害では、自分の命を自分で守ることが一番大切」と大西さん。「身近に防災用品を備え、減災意識を持ってもらうお手伝いができれば」
文・太田理英子 写真・木口慎子
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