<解説>ロシアの侵攻、まるで第2次大戦前夜のよう 民主主義の危機で「力の外交」台頭の恐れ

2022年2月24日 21時14分
 世界が注視する中でのロシアによるウクライナ侵攻は、主権国家に対するあからさまな侵略となった。国連の常任理事国でもある大国の蛮行は、第2次大戦後に築かれた国際秩序の基盤を根底から揺るがしている。国際法を無視し、軍事力を背景とした「力の外交」に頼る世界を生み出しかねず、日本を含めた国際社会を混乱に陥れる暴挙だ。
 プーチン大統領は侵攻を前に、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)の「東方拡大」継続はロシアの脅威であり、ウクライナ国内のロシア系住民を保護する必要があると主張した。しかし、主権国家への攻撃を正当化する理由にならないのは明白だ。
 プーチン氏が妄想ともいえる独自の歴史観、民族問題を振りかざして侵攻を命じる様は、まるで第2次大戦前夜のナチス・ドイツによる東欧諸国への侵攻、1990年のイラクのクウェート侵攻を想起させる。
 旧ソ連も署名した41年の大西洋憲章は、領土不拡大や国民の合意なき領土変更は認めないとの原則を確認。国連憲章は自国が攻撃を受けたり、国際社会の共通利益とならない場合の武力行使を否定した。今回のロシアの侵略行為は、いずれのルールにも違反する。

◆東アジア各地にも中国の火種

 いま世界中の人々が見ている光景は、単に欧州だけの問題ではない。力によって独自の主張を貫くことを許せば、国際社会への影響は計り知れない。東アジアでは中国が台湾統一に固執し、尖閣諸島や南シナ海を軍事力で制圧する可能性を否定しない。「核心的利益」「中国の夢」など自国の論理をごり押しすれば、次は米中の衝突につながり、日本の安全も脅かされる。
 ロシアを抑え込むことができなかったのは、分断による「民主主義の危機」に直面する米国が衰退しているとプーチン氏が判断したためとの指摘もある。中国も同じ「目線」かもしれない。専制主義(権威主義)国家と対峙たいじするには、力の行使に結束して反対するだけでなく、米欧や日本など各国が自らの民主主義の再生を追い求めていく必要がある。(アメリカ総局長・金杉貴雄)

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