チェルノブイリ制圧、ハイブリッド戦争…キーワードで読み解くウクライナ侵攻

2022年2月26日 06時00分

◆SWIFT排除 経済に破壊的打撃

25日、ウクライナの首都キエフで、自宅を攻撃されて悲しむ女性=AP

 経済制裁の効果に疑問符が付く中、最も厳しい制裁として浮上しているのが、ロシアのすべての銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)から排除する方法だ。ドル建てを中心にロシアの貿易を大幅に縮小させてしまう手段。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「ロシア経済に壊滅的な打撃を与える」と語る。
 スイフトは銀行間の国際的な決済ネットワークとして1973年に誕生。本部はベルギーで、公的な仕組みだが、国連の制裁決議のように参加国の意見の一致は必要ではない。世界の貿易で使われる事実上の基軸通貨ドルを発行する米国の判断ひとつで可能だ。
 排除されれば原油や天然ガスを輸出しようにも、ドルで代金を受け取る手段が実質的になくなり、輸出は急減する。ロシアの通貨ルーブルをドルに替えることもできず、通貨としての国際的な信用はがた落ちだ。「ロシアで通貨危機が起きる」(木内さん)ため、米国の経済制裁の切り札になる。2012年には核開発疑惑が指摘されたイランが排除され、大打撃を受けた。
 とはいえ、ロシアは原油や天然ガスの供給国。天然ガスをロシアに依存する欧州各国は、燃料不足や価格高騰を避けたい。日本も、自動車の排ガスをきれいにする部品に使うパラジウムをロシアに依存する。
 「排除がブーメランになって返ってくる」と木内さん。それを知るロシアは「すべての銀行の排除は簡単にはできないはずだと考えている」とみる。米国は関係国への悪影響を考慮して排除に踏み切っていないが、木内さんは事態の悪化が止まらなければ「返り血を覚悟して、排除に踏み切るのでは」と指摘した。

◆プーチン演説は「歪曲、こじつけ、決めつけ」だらけ

 侵攻を巡っては、21日と24日のプーチン大統領の演説も注目されている。歴史を振り返りながら、繰り返し正当性を主張。北海道大スラブ・ユーラシア研究センターの宇山智彦教授(旧ソ連地域研究)は「歪曲、こじつけ、決めつけの多さと、繰り言的なくどさにあきれる」と切り捨てる。

ロシアのプーチン大統領=AP

 プーチン氏は21日の演説で「現在のウクライナは完全にロシアによって、正確には共産主義のロシアによってつくられた」と主張し、旧ソ連の中でウクライナ共和国の成立を認めたレーニンらを批判。宇山さんは「ウクライナが歴史的にも現在も、国家としての資格を持たないと決めつけている。ロシア革命期のウクライナ人独立への希求を一部のナショナリストのものであるかのように扱っている」とみる。
 ウクライナの内政問題を繰り返し語り「犯罪者を裁判にかける」と述べたことには、「ちゅうちょなく内政干渉をしようとしている」(宇山さん)と感じたという。「プーチン氏は近年、ウクライナとロシアの歴史的一体性を論じることに熱中している。だが、物事の多面性を理解するという、歴史家が持つ態度とは対極的だ。妄想に近いものがある」
 今後はどうなるのか。宇山さんは「今のままでは泥沼化する」と悲観的だ。解決に向かうなら「ロシア国内で政権への支持が大幅に下がり、軍の中でも厭戦気分が広がるとき」という。それまでは新たな軍事行動を起こさないよう「厳しく監視・対処していくしかない」と話す。

◆デスクメモ

 この前まで軍事演習に参加する兵士や兵器の映像がメディアにあふれていたが、侵攻開始を境に激減した。戦争が始まったことを実感する。日本経済への影響も気になるが、そこにいる人たちの生命や財産が失われること自体が問題だ。見えない戦争でも、関心を持ち続けなくては。(本)
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