<ひと ゆめ みらい>長編ドキュメンタリー映画「杜人」制作 自然との関わり見つめて 前田せつ子さん(60)=国立市

2022年2月28日 07時06分

矢野さんと出会うきっかけとなったさくら通りでカメラを手にする前田さん=国立市で

 「大地も人と同じように呼吸している」と、土の中にある空気と水の通り道の大切さを説き、各地で「大地の再生講座」を開く山梨県の造園家、矢野智徳(とものり)さん(65)を追ったドキュメンタリー映画を制作した。
 初めて手掛けた長編映画で、監督、撮影、編集を一人でこなした。映画のタイトルは、「杜人(もりびと)−環境再生医 矢野智徳の挑戦」。
 「『杜』とはかつて人々が大切にした言葉で、この場所を傷めず穢(けが)さず大事に使わせてください、と森の神に誓ってひもを張った場を指すそうです。映画を通じて『杜』の概念が、少しでも多くの人に伝わってほしい」。SDGsへの世間の関心が高まる中、矢野さんの活動を伝えることが、自然との関わりを見つめ直すきっかけになればと願う。
 矢野さんと出会ったのは二〇一四年。市内の桜の名所の樹木伐採への反対運動をする中で、元市民の矢野さんを招いて勉強会を開いた。翌年には市内のカフェで開かれた矢野さんの講座に参加した。
 市による伐採は止められなかったが、木と周りの土を丁寧に見て「樹高を切り詰めて下草を生やし、地面に空気を入れれば大丈夫」と話し、大地の呼吸を語る矢野さんの姿が、アニメ映画「風の谷のナウシカ」の主人公と重なって見えた。「矢野さんの言い回しは独特で詩のようだけど、物事の本質を誰にでも分かるように指し示している。その場にいる人しか聴けないのはもったいない」。映画を撮って、矢野さんの活動を形としてとどめたいという思いが募っていった。
 持っていた機材はハンディカメラのみで、映像は趣味で撮る程度。撮影や編集に自信はなかった。映画監督の纐纈(はなぶさ)あやさんに「思いは技術に先行する。前田さんなら大丈夫」と背中を押され、一八年五月に矢野さんを撮り始めた。制作費はクラウドファンディングで募り、百二十万円の目標額に対して五百九十四万円が集まった。
 西日本豪雨の被災地である岡山県倉敷市真備町など、約三年半をかけて三十二カ所の現場に同行し、矢野さんが木々と大地を再生させようと奮闘する様子を記録した。
 「杜人(もりびと)−環境再生医 矢野智徳の挑戦」は四月十五日に「アップリンク吉祥寺」(武蔵野市)で公開。「シネマ・ジャック&ベティ」(横浜市)でも四月二十三日に上映される。(林朋実)
<まえだ・せつこ> 山口県出身。東京外語大卒業後、会社員として音楽雑誌などの編集に携わる。1999年からフリーランスの編集者。環境や原発問題に関心を持ち、2011〜15年に市議1期を務めた。現在は「杜人」の宣伝活動を行いつつ、2作目以降の映画制作も構想中。

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