<ひと物語>ナシ栽培 次世代へ JA南彩技術参与・水戸部満さん

2022年2月28日 07時09分

栽培塾を通して「次の世代に培ってきた技術をお返ししている」と話す水戸部さん=いずれも久喜市で

 今月十七日、久喜市菖蒲町にあるナシ園に、さまざまな年代の男女三十人ほどが集まっていた。枝の広がりがよく見渡せる冬のナシ園。中心にいたのはJA南彩の技術参与、水戸部満さん(73)だ。ナシの枝を示しながら、花と葉を付けるようになる花芽と、花は付けず葉だけができるようになる葉芽の見分け方を説明した。
 久喜、白岡、蓮田市などを管内にして県内一のナシ栽培面積を誇るJA南彩が、ナシ生産の基本を伝え、後継者を育成しようと開く新規ナシ栽培塾。水戸部さんは二〇〇九年の開始当初からずっと講師を続けている。
 県職員として主に県園芸試験場で、ナシにどう手をかけたらより多く効率的に生産できるか研究してきた。退職後にJA南彩に入り、生産者が直面する課題の相談に乗ってきた。
 農園に直接赴いて栽培法などを説明する中、男性園主のかたわらで熱心に話を聞く妻や娘ら女性の姿があった。彼女たちから聞こえてきたのは「作業を手伝っているが枝拾いばかりでつまらない」「ナシ栽培全体を覚えたい」といった声。「体調を崩したお父さんの代わりに私が技術を覚えてナシ園を続けたい」などの要望もあり、熱意に応えようと女性を対象にした実技講座として塾を始めた。
 ナシの栽培は年間を通じてさまざまな作業がある。余分なつぼみを落とす摘蕾(らい)、花を落とす摘花、受粉、収穫、枝の剪定(せんてい)など。「塾の受講後すぐに自分たちの園で実践できるようにしたい」と考えた水戸部さん。季節の作業の開始に合わせて塾を開くため、月に二回ずつ、年間を通して開くことにした。
 参加した女性たちは意欲的だった。説明の大事なポイントを見逃すまい、聞き逃すまいという気構えが伝わってきた。自身もそんな姿勢に応えようと熱心に指導した。すると塾の評判が広がり、知識や技術を学びたいという男性からも参加を希望する相談が増えた。

新規ナシ栽培塾で塾生に枝についている芽を説明する水戸部さん(中央)

 翌一〇年度からは男女の別なく、年度途中からの参加も認めるようになった。最新の研究の情報を加えたり、塾の卒業生の農園を訪問して先輩から学ぶ回を設けたりして、より学びを深められるようにした。平年より気温が高い年にはナシの成長が早まるため、開催日を前倒しするなど受講生の役立つ塾という基本を貫く。塾生からの質問にもいつも熱心に回答する。
 JA南彩でもナシ生産者は高齢化し、栽培農家は減少を続けている。一〇年に四百四十一戸、二百三十二ヘクタールで栽培されていたが、二一年は二百二戸、八十六ヘクタールまで落ち込んだ。生産者たちが努力して栽培技術を高め、「甘くてみずみずしいシャリ感が良い」という自慢の南彩のナシを、水戸部さんは塾生たちに「守ってほしい」と願いを込める。
 塾の開始から十二年たったが、楽しみながら後進の育成に励む日々だ。水戸部さんは「皆さん参加すると生き生きしているし、反応がある。こちらもウキウキして年を取らないですよ」と話した。(寺本康弘)
<みとべ・みつる> 1948年生まれ、久喜市在住。大学卒業後、71年に県職員となり、主に県園芸試験場(現・県農業技術研究センター久喜試験場)で果樹の研究に取り組んだ。2009年4月からJA南彩の営農総合技術参与を務める。新規ナシ栽培塾は4月から翌年3月まで、久喜市菖蒲町のナシ園などで年23回の講座として開く。

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