希望の旋律、日本から祖国へ ウクライナ出身の音楽家2人が平和への思い訴え

2022年3月1日 06時00分
 ウクライナ出身で日本を拠点に活動する音楽家2人が本紙の取材に応じ、ロシア軍の侵攻が続く母国への思いを吐露した。

民族楽器バンドゥーラを手に、ウクライナの状況を話すカテリーナさん=東京・内幸町の中日新聞東京本社で

◆キエフの母案じる民族楽器奏者カテリーナさん


 民族楽器バンドゥーラ奏者のカテリーナさん(35)=東京都=は、首都キエフに一人で暮らす母マリヤさん(68)の身を案じつつ、平和への思いを音楽に託す。
 「近くのマンションにミサイルが当たった」「銃やヘリの音がずっと聞こえる」。母は連日、ビデオ電話で緊迫した状況を伝える。つらい時も笑顔だったが、今は毎日、声を上げて泣く。28日夕(日本時間)には「今日は静か過ぎて怖い」と打ち明けた。
 カテリーナさんが生後1カ月の時にチェルノブイリ原発事故が起き、原発近くの町から1家で首都に避難した。母は今も避難者向けの団地で生活する。「もう逃げたくない」と自宅を離れない。

◆現地ニュース伝え、日本人に期待

 「大変な時に、なんで日本にいるんだろう」と、2006年から日本で活動するカテリーナさん。以前、母を日本に呼び寄せようとしたが、新型コロナの感染拡大で立ち消えに。副業の翻訳で現地ニュースを伝え、日本のメディア取材にも応じる。「ウクライナのことを伝えることで、日本の人が行動を起こすきっかけになれば」と考える。
 3月10日には音楽活動の拠点・横浜市で開かれる東日本大震災の追悼イベントに出演し、バンドゥーラを演奏する。原発事故を経験したつながりで、例年参加してきた。今年は「平和になりますように」と祖国へのメッセージも込める。(米田怜央)

オペラ歌手でバンドゥーラ奏者のオクサーナ・ステパニュックさん。「音楽でできることを」と話す=東京都内で

◆小さな村出身のオペラ歌手オクサーナさん


「今こそ、音楽を通してできることを」。オペラ歌手で、民族楽器バンドゥーラ奏者でもあるオクサーナ・ステパニュックさん(44)=東京都=は、母国を支援するコンサートを開く予定だ。
 首都キエフの南約80キロの小さな村の出身。村に住む両親とは毎日、会員制交流サイト(SNS)で連絡が取れている。「森や畑があって自然豊かなところ。1日も早く平和になってほしい」と無事を祈る。
 ウクライナ国立チャイコフスキー記念音楽院の声楽科と器楽科を首席で卒業。各国でコンサートに出演、2008年から日本に住む。東日本大震災後は被災地支援のチャリティーコンサートを毎年開き、今年も8月に予定している。

◆4、5月に支援コンサート

 その前に急きょ、4月に長野県松本市、5月に埼玉県熊谷市で、母国の支援コンサートを開くことにした。「日本の人たちに侵略の悲しみと平和の大切さを伝えたい。希望と祈りを込めて歌う」。音楽仲間やファンからは励ましや家族の無事を祈るメッセージ、電話が毎日、数十件来る。「たくさんの人が私や家族、私の国を心配してくれている。本当に支えてもらっていると感謝している」(奥野斐)

おすすめ情報

ウクライナ危機の新着

記事一覧