ウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰、「悪い物価上昇」深刻化か…食品、ペットボトル飲料も値上がり 

2022年3月2日 06時00分
 身近な食料品や日用品の値上げが3月以降も相次ぐ。新型コロナウイルス禍から持ち直しつつある欧米の景気回復を背景に、原油価格の高騰で原料費や物流費が上昇したためだ。ロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギー価格がさらに高騰しており、コストの上昇が製品価格を押し上げる「悪い物価上昇」がより深刻化する懸念が強まる。
 食品では、ソーセージやサバ缶、チーズなどが値上がりする。伊藤ハムは、ソーセージの定番「グランドアルトバイエルン」(2袋束)の希望小売価格を600円から630円にした。担当者は「原油高で工場の電気代や配送費が上がった」と説明する。
 石油が原料のペットボトルも値上がりする。コカ・コーラボトラーズジャパンは、炭酸飲料の「コカ・コーラ」(1.5リットル)や、お茶の「綾鷹あやたか」(2リットル)の出荷価格を引き上げ。大塚食品も、ペットボトル水「クリスタルガイザー」(500ミリリットル)の希望小売価格を100円から10円高くした。
 パルプなど紙原料を加工する際に使われる原油の価格高騰で、値上げは、ティッシュやトイレ紙にも波及。製紙大手の担当者は「企業努力だけではコスト増加分を吸収できない」としている。(大島宏一郎)

◆<Q&A>悪い物価上昇って? 消費者の実感は?

 原油高や資源高によって身近な食料品や日用品の値上げが相次いでいます。賃上げで消費が盛り上がって物価も上がるという好循環ではなく、家計や企業の負担だけが増す「悪い物価上昇」の様相です。賃上げと消費増の循環に水を差しかねないと懸念されています。
Q 物価高はどんな悪影響がありますか。
 懸念点は、企業の値上げが消費者の節約につながって消費が冷え込み、企業のもうけを減らすという悪循環です。一方、企業が価格を据え置くと、コスト増加分を自社で負担することになり、もうけを賃上げに振り向けにくくなってしまいます。
賃金や消費に関する最近の指標をみると、1世帯当たりの昨年12月の実質消費支出は前年同月比で5カ月連続のマイナス。物価変動を加味した実質賃金も4カ月連続で減っています。

ソーセージやチーズなどが並ぶスーパーの売り場=東京都練馬区のアキダイ関町本店で

Q 小売り現場や消費者の実感はどうですか。
 東京都内でスーパーを展開する「アキダイ」の秋葉弘道社長は「商品価格が通常より安い毎週日曜日の特売日は、食費を抑えたいという買い物客で行列ができる」と話しています。「安く売っている店をはしごする」(40代女性)買い物客もいました。
 日銀が昨年11~12月に実施した生活意識アンケートによると、現在の物価が1年前と比べて「上がった」と答えた人の割合は7割を超えています。
Q 値上げの動きは今後どうなりそうですか。
 多くのエコノミストが「物価上昇は続く」とみています。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は、情勢が緊迫化するウクライナが小麦の輸出国であることから「小麦の供給が減る」と予測。ロシアが世界有数の産油国である点も念頭に「世界中で穀物や資源の取り合いになれば、食品を中心に価格の上昇圧力につながる」との見方です。

特売品を買い求める客で行列ができたスーパー=東京都練馬区のアキダイ関町本店で

 企業間で取引されるモノの値動きを示す1月の企業物価指数が前年同月比8.6%と急上昇しており、企業がコスト増に耐えられず値上げする事例は増えるとみられます。政府が目指す消費増と賃上げによる「成長と分配の好循環」は遠のくことになります。家計を守るには「携帯電話を格安プランに切り替えるなど通信費のような固定費の見直し」(ファイナンシャルプランナーの清水香さん)が必要になりそうです。

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