<ミロ展 この作品をミロ>(2)「絵画と詩 区別しない」 《絵画(カタツムリ、女、花、星)》
2022年3月2日 07時26分
1933年から34年にかけて、タペストリーの下絵制作の依頼を受けてミロはこの絵を制作した。その大画面と完成度の高さゆえに、下絵の範疇(はんちゅう)を超えてミロの30年代の代表作に位置づけられている。画面にはタイトルに登場する「カタツムリ」「女」「花」「星」とフランス語で4つの言葉が書かれ、その文字の線は重なり合い、三次元空間に浮かんでいるかのような奥行き感を生み出している。この頃ミロは絵画作品に単語や文章を書き入れることを好んでいた。静物画に印刷物の文字をレタリングしたり貼り付けたりしていたキュービスムの手法を、ミロはさらに進化させ、漠然とした空間に直接自身の手で文字を書き込んだ。「私は絵画と詩を区別しません。絵を詩句で飾ることもあれば逆もまた然り。精神の大家である中国の人々もそうしませんでしたか?」とミロは語る。文字と絵画が複雑に絡み合う空間には、東洋世界へのほのかな憧れが見え隠れしているのである。(吉川貴子=Bunkamura ザ・ミュージアム学芸員)
(次回は3月9日掲載)
◆渋谷で開催中
「ミロ展」は4月17日まで東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中。会期中一部日程で入場日時予約あり。詳細は展覧会公式HPへ。
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