「男性トイレにサニタリーボックスを」 前立腺がん患者ら 尿漏れパッド捨てられず

2022年3月2日 08時39分
 男性トイレにサニタリーボックス(汚物入れ)を設置してほしいとの声が高まっている。前立腺がんなどの病気が原因で、尿漏れ用のパッドなどを使っている人たちが、捨てる場所がなく困っているからだ。こうした声を受け、公共施設の男性トイレにサニタリーボックスを設置しようと、動き始めた自治体もある。 (細川暁子)
 二〇二〇年秋に前立腺がんの手術を受けた埼玉県加須市の荒木靖夫さん(62)は、尿漏れパッドを下着に貼って使っている。手術後、尿道を締める筋肉が傷ついた影響で排尿コントロールが難しくなり、頻尿や尿漏れに悩むように。特に寒い冬場はトイレが近く、一日二〜三回パッドを交換するが、外出時は捨てる場所に困るという。「手術を受けた病院は、同じような悩みを持つ患者が多いからか、男性トイレに汚物入れを置いてある。その他の場所には、ほとんどない」
 友人たちと飲みに行った時には、店のトイレの個室でパッドを交換。使用済みはポリ袋にくるんでズボンのポケットに隠して席に戻り、かばんに入れて持ち帰った。「前立腺がんに限らず、前立腺肥大で尿漏れに悩む男性も多いが、パッドを付けていることは恥ずかしくて言いづらいもの。高齢化も進む中、私のように困っている人が結構いるのではないか」と話す。
 公共トイレの環境改善活動を行う一般社団法人「日本トイレ協会」(東京)事務局長の砂岡豊彦さん(67)も、パッドを捨てるのに困った経験がある。十五年ほど前、太ももの付け根が痛む「変形性股関節症」になり、痛み止めの座薬を使用。薬が溶け出すと下着が汚れてしまうため、パッドが欠かせなかった。だが、当時勤めていた会社内や外出先で使用済みを捨てる場所がなく、かばんに入れて持ち歩いていたという。
 同協会は二月、インターネット上で男性トイレのサニタリーボックス設置に関するアンケートを実施。回答した男性三百三十六人のうち、四十人が尿漏れパッドやおむつなどを使用しており、そのうちの約七割が、トイレにサニタリーボックスがなくて困った経験があると答えた。砂岡さんは「パッドなどが必要な男性は少数派かもしれないが、多様性を尊重する社会の実現に向けて、男性トイレのサニタリーボックス設置を考えてほしい」と訴える。

◆施設での設置 進む自治体も 床に放置などの事案受け

 男性トイレのサニタリーボックスの設置を進める自治体も出てきた。さいたま市は本年度中に、文化施設とスポーツ施設の計18カ所に設置する予定。市スポーツ振興課の担当者は「病気などで必要とする人がいるため、設置することになった」と話す。
 市健康増進課によると、昨年6月に「困っている人がいる」と市議からの指摘があり、サニタリーボックスの設置状況を調査。333の市有施設のうち、男性トイレに設置しているのは8施設だった。これらは使用済みの尿漏れパッドを床に放置したり、トイレに流して詰まらせたりする人がいたため、設置したという。

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