多機能トイレで男性死亡、入室から7時間後に発見 非常ボタンはブレーカー切れで使えず
2022年3月3日 06時00分
東京メトロは2日、日比谷線八丁堀駅(東京都中央区)の多機能トイレで2021年6月、50代男性が倒れているのが入室から7時間後に見つかり、搬送後に病院で死亡が確認されたと発表した。当時、長時間の在室を知らせる警報システムや非常ボタンが作動しない状態だった。同社は「深くおわびする」とする一方、男性の障害や持病の有無は明らかにせず、死亡との因果関係は分からないとしている。
◆警報のケーブル接続されず
同社によると、男性は昨年6月7日午後4時ごろ、同駅改札外の多機能トイレに入室。同11時ごろ、巡回中の警備員がトイレ使用中のランプに気づいた。しばらくしても出てこなかったため、駅係員らが鍵を開け、男性が倒れているのを見つけた。警視庁中央署によると、男性は検視で病死と判断したという。
このトイレは、在室30分以上になると駅事務所で警報が鳴るはずだったが、事務所までのケーブルは未接続で作動せず、室内の非常ボタンのブレーカーは切れていて使えなかった。12年の供用開始時に機能試験をせず、その後の点検も怠っていたという。男性が非常ボタンを押そうとしたかは分かっていない。
この事例を受け、同社は駅などの約220カ所の多機能トイレで同様の不具合がないか点検し、12カ所で修理を行った。今後は定期点検の実施など、再発防止を徹底するという。
◆国交省「機能するのは当然」
東京メトロが多機能トイレの機能確認をしていなかったことについて、国土交通省は「設置前か設置後かのタイミングは別として、設置したからには、機能するようにしておくのは当然のことだ」と指摘。
同省が公共交通機関のバリアフリーについて定めたガイドラインでは「バリアフリー設備の機能を十分発揮させるために必要な操作や維持管理などを行うことが重要」と明記している。東京メトロに詳しい説明を求めているという。
障害者団体でつくるDPI日本会議の佐藤聡事務局長は「非常ボタンは、使うことが多いわけではないが、車椅子から落ちて動けなくなった障害者が使うこともある。緊急時に必要なものなので、きちんと使えるようにしておくことは非常に大事だ」と話した。(砂上麻子、山田雄之、加藤益丈)
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