生活保護受けるには退学か休学が必要…そんなのおかしい 1人の弁護士の訴えが横須賀市を動かした

2022年3月3日 11時00分

請願のため県議会を訪れた飛田さん(右)と虐待被害者支援団体の中村舞斗代表=横浜市中区で(飛田さん提供)

 神奈川県横須賀市が4月から、家庭で虐待を受けて自立援助ホームに避難している10代の大学生や専門学校生らに、生活保護と同程度の生活費を支給する。体調を崩してアルバイトをできなくなり、生活保護に助けを求めたくても、学生は対象外。生活保護を受けるには、退学か休学しなければならないというジレンマがある。1人の弁護士が行政の支援の必要性を訴えたところ、ネット上で賛同の輪が広がり、横須賀市を動かす形となった。(石原真樹)
 支援対象は、自立援助ホームに入所している18、19歳(申請時)の大学生や短大生、専門学校生ら。生活保護基準相当額(月額約7万円)と通学費を、最長1年半支給する。寄付をもとに昨年創設した基金を財源にする。全国でも異例の取り組みという。
 「虐待を受けた子が18歳になってから逃げると、児相(児童相談所)は原則取り扱いできません。頼みの綱は、生活保護です。でも大学生はダメなんです」
 昨年8月、虐待を受けた若者の支援に取り組む横浜市の飛田桂ひだけい弁護士はツイッターに投稿した。高校を卒業し、虐待する親からやっと逃れて自活しても、虐待のトラウマ(心的外傷)から体調を崩したり、生活費と学費を稼ぐためにアルバイトを掛け持ちして疲れ果てたりして、進学を諦める若者に何人も会ってきた。

ツイッターに投稿した飛田さんの訴え(今年1月28日時点)

 「進学は虐待に耐えて命がけで守った夢。生活保護を受けるために、その夢を諦めなければいけないなんておかしい」
 葛藤をぶつけた投稿が拡散され、賛同を意味する「いいね」があっという間に6700件近く集まった。虐待被害者の支援団体から「一緒に政策提言しましょう」と声がかかり、生活保護の柔軟な運用を求める署名集めを合同でスタート。昨年10月に3万2062筆を厚生労働相に出した。同月、神奈川県議会に対し、運用について国に働きかけるよう求める内容の請願が採択され、県議会は衆参両院議長や首相らに宛てた意見書を提出した。
 一方、横須賀市では同9月、親からの虐待を逃れて民間シェルターに入った大学生が病気療養で休学中に生活保護を受給したが、復学すると打ち切りになるとして、休学か退学を迫られる事例が発生。飛田さんらは12月に上地克明市長に支援の必要性を直談判し、今回の取り組みにつながった。
 横須賀市の次は、国を動かすのが目標だ。「受給しながら学ぶことは自立につながり、社会のためにもなる」。厚労省は児相が対応する年齢制限(原則18歳未満)を撤廃する方針を示し、今国会で議論される見通し。ただ、虐待を受けても児相による保護などに至らず、家庭で暮らす子も少なくないとして「児相が関与するのは氷山の一角。セーフティーネットに穴がないようにしてほしい」と力を込める。

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