「核共有」日本導入なら非核三原則変更は不可欠 政策研究大の岩間教授に聞く

2022年3月6日 06時00分

岩間陽子教授(本人提供)

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、米国の核兵器を日本国内に配備し、共同運用する「核共有」導入に関する議論を始めるかどうかについて、各党から意見が出ている。この政策を採用している米欧の軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)に詳しい政策研究大学院大学の岩間陽子教授に仕組みなどを聞いた。(聞き手・川田篤志)

◆米国の核を自国に受け入れ、運搬・使用は自国で

 ―どのような政策か。
 「米国の核兵器を自国の基地に受け入れた上で、平時の管理は米軍、有事になると核を戦闘機に搭載し『運搬・使用』をNATOの作戦内で自国が行う取り決め。核使用にはNATOの決定が必要で、核兵器を管理する米国の同意なしには成り立たない」
 ―参加しているのは。
 「NATO加盟国のうち、現在はドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコが核共有しており、この5カ国には戦闘機に搭載可能なB61核爆弾が約100発あると推定されている」
 ―導入された経緯は。
 「NATOは1950年代、ソ連(当時)と有事になれば米軍が早期に核を投入する防衛戦略を基本とし、多くの核兵器が西ドイツなどに配備されていた。ただ、米軍が米国本土への報復リスクがあるのに核を使うのかという疑念が欧州の加盟国側に高まり、一緒に運用する案が出た。核拡散防止条約(NPT)体制が固まるまでに米国と取り決めを交わし、今も継続しているのが5カ国だ」
 ―共有された核を使う手続きは。
 「NATOの理事会で核使用を決断する必要がある。米国が望まないのに核が使用されるということは事実上ない。一方、米国が使うと決めても、受け入れ国が運搬手段である戦闘機を飛ばさないという選択もあり得るが、それは同盟の機能停止につながるので重い選択になる」
 ―日本への導入の可否や効果は。
 「日本は非核3原則で核を『持ち込ませない』と宣言している。これの変更なしにはあり得ない。核兵器受け入れには国民と地元の同意が必要で、これも難しいだろう。核貯蔵庫があればすぐ分かるので、相手からの先制攻撃の標的になる。いったん核を使用すれば相手からの核の報復が始まるエスカレートを管理するのが難しく、核使用の決断は非常に重い。政治的にも軍事的にもコストが高すぎる」

いわま・ようこ 1994年に京都大学大学院博士後期課程を修了。在ドイツ日本大使館専門調査員などを経て、2009年から現職。専門は欧州安全保障。著書に「核の一九六八年体制と西ドイツ」(有斐閣)など。

◆各党で割れる賛否 安倍氏が口火、政府は否定 核共有の議論

 「核共有」議論の開始を求めて口火を切ったのは安倍晋三元首相。岸田文雄首相は否定したが、各党の賛否は割れている。

記者会見する岸田文雄首相=3日、首相官邸で

 安倍氏は2月27日のフジテレビ番組で、ソ連崩壊後にウクライナが核兵器を手放した経緯に触れ、抑止力強化に向けて「(核共有の)議論をタブー視してはいけない」と提起。これに対し、首相は「政府として議論は考えていない」と強調した。3日の記者会見では「絶えず何が求められるかを検討し続けることは大事だ」としながらも「非核3原則を守りながら、自らの防衛力と日米同盟の抑止力で国民を守れると信じている」と述べた。
 自民党の福田達夫総務会長は「国民や国家を守るのなら、どんな議論も避けてはいけない」と安倍氏に同調。日本維新の会は「ロシアが核による威嚇という暴挙に出た事態を直視し、核共有の議論を開始する」と明記した提言をまとめた。
 国民民主党の玉木雄一郎代表は、非核3原則のうち「持ち込ませず」の定義が不明確だと指摘し、見直しも含めた検討を求めた。
 一方、立憲民主党は「唯一の戦争被爆国として非核3原則の堅持が日本の立場だ」とする談話を発表。共産党は「非核3原則は国是だ」と反発し、連立与党の公明党も現行の政策変更に否定的だ。(川田篤志)

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