<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>切り抜きコンクール 受賞作から(1)小学生の部・最優秀賞

2022年3月8日 07時29分

◆いろんな色の虹を描こう
 日野夏希さん(小4) 「チャレンジは無限大 〜障害を乗り越えて〜」

 クレヨンでメイン見出しの背景に描いたカラフルな虹が印象的な作品だ。東京新聞主催第18回「新聞切り抜き作品コンクール」小学生の部で最優秀賞に選ばれた東京都世田谷区立中町小学校4年、日野夏希さん(10)の作品「チャレンジは無限大 障害を乗り越えて」。姉の琴音さん=同区立玉川中学3年=も2年前に中学生の部で最優秀賞を獲得しており、姉に続く最高賞受賞となった。 (東松充憲)
 夏希さんは障害者に関する新聞記事を集めてみた。昨夏の東京パラリンピックで選手たちの活躍する姿に感動。障害のある人たちがふだんどのように生活しているのか、知りたくなったという。
 使った記事の切り抜きは十一点。視覚障害者が音をたよりにコーヒーの焙煎(ばいせん)作業に取り組む努力を伝えた記事、障害者の出会いを支援するアプリの記事などがある。難しい漢字は「お母さんやお父さんに聞いて、一緒に読んだりしました」(夏希さん)。
 記事の中で大事だと感じた部分にはマーカーで線を引いてある。記事ごとに感想のコメントを手書きで添えた。
 「本当に誰もが使いやすいものか確かめてみることが必要だと(記事を読んで)知った。作るだけでなく使う人の声を聞くことを忘れてはいけない」と夏希さんが記したのは、東京新聞の昨年十二月十日朝刊一面トップに載った「鉄道点字シール 高さばらばら」という見出しの記事。
 電車に乗った視覚障害者が、いま何番目の車両のどのドアにいるかわかるよう、ドアの内側に点字のシールが張ってある。ところが鉄道会社によって張る場所の高さがまちまちで、視覚障害者にとって使いやすいとはいえない。その実情を大きく伝えた。

◆大事な部分にマーカーで線を引く 10本の感想コメント踏まえ「まとめ」も

 新聞をたくさん読み、その記事の切り抜きを集めて自分だけの新聞をつくる――。コンクールには今回も、首都圏の小中高校生から1000点を超える作品が寄せられた。
 切り抜いた記事をしっかり読めたかどうかは、手書きやパソコン作成でひとつひとつの記事に添えられた感想コメントを読めばわかる。切り抜きの記事にマーカーで線が引いてあれば、そこを踏まえて感想コメントが書かれるはずなので、さらにわかりやすい。作品の審査では、それらも重視される。
 夏希さんの作品では10本の感想コメントを踏まえて右下の「まとめ」の文章がしっかり記され、メッセージ性のあるタイトルに結実している点が高く評価された。

◆記事の感想しっかりと 公民館の教室で仲間と切磋琢磨

 夏希さんは学校単位ではなく個人の立場でコンクールに応募した。世田谷区や目黒区、小金井市の公民館で開かれる「体験・表現教室」に通い、その教室が切り抜き作品づくりを学びに取り入れていたことから、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)しながら挑戦した。
 家庭で新聞を定期購読していることが入会条件のこの教室からは今回、夏希さんをはじめ、小学生の部で優秀賞一人と入選三人、中学生の部で努力賞一人の計六人の受賞者が出た。
 多数の受賞につながった工夫の一つが、互いのテーマを知らせ合い、よい記事を皆で探す協力体制だ。それぞれの家庭で購読する新聞が異なる。テーマに関係する記事を見つけたときには持ち寄り合った。夏希さんは仲間からもらった日経新聞の記事の切り抜きを作品に生かし、仲間にも見つけた切り抜きをプレゼントしたという。
 教室を主宰する間宮功さん(79)は「新聞をしっかり読まない親の場合、子どもに新聞を読む習慣は定着しません。難しい漢字が出てくる記事は、親が『新聞の読み聞かせ』をしてあげてほしい。切り抜きスクラップを続けるうち、子どもは自分の興味の焦点が何なのかに気づき、さらに深掘りする意欲がわきます」と話している。

◆本紙記者「思い伝わった」 誰もがチャレンジできる社会に

 記事を書いた編集局社会部の中村真暁(まあき)記者は夏希さんがコメントで「当事者目線」の大切さを記したことに「これはまさに私が伝えたかったこと。思いが伝わりとてもうれしい」と喜ぶ。中村記者の感想を知った夏希さんも「中村さんと同じ気持ちだったのがうれしい」と笑顔を見せた。
 記者と夏希さんの心が、ひとつの新聞記事でつながった。
 姉の琴音さんからは「ノリで貼るときは丁寧に」というアドバイスを受けたという。作品は細部まで心を配った内容に仕上がった。
 作品の背景にカラフルな虹をあしらった理由を夏希さんはこう話す。「記事を並べただけでは寂しかったし、記事を読んで(障害のある人も)私と同じように友だちがほしいと思ったり、やりたいことがあるとわかったから、いろんな(希望の)色がある虹を描こうと思いました。障害者の人に何かをしてあげるというより、障害者の人もだれもがチャレンジできる社会になっていったらいいなと思います」

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