米ニューヨークで初、女性6割の市議会に コロナ禍の苦境で構図一変「声を上げるのを怖がる必要はない」

2022年3月9日 06時00分
 米最大都市ニューヨークで1月、女性議員が全体の6割を占める市議会がスタートした。新型コロナウイルス禍で浮き彫りとなった生活難や矛盾を、女性候補者が昨年の市議選で丁寧にすくい上げ、市議会史上初の過半数となった。新人女性議員や支援団体は「異なる背景を持つ女性の政治参加は議題や政策の多様化をもたらす」と訴えている。(ニューヨーク・杉藤貴浩、写真も)

◆女性14人→31人、2021年11月市議選で

2月、女性議員が6割を占めるニューヨーク市議会の前で抱負を語る新人議員のリンダ・リーさん

 市中心部の市議会議事堂で2月、リンダ・リー議員(42)が同僚議員や職員らとあいさつを交わしていた。リーさんは昨年11月の市議選に初めて立候補し当選した新人。任期2年の抱負を尋ねると「たくさんありすぎて困る」と笑顔を見せた。
 市議選では51議席に対し、106人が立候補。このうち46人がリーさんら女性で、新人26人を含む31人が当選した。14人だった選挙前から2倍以上の大躍進で、19世紀序盤から続いてきた男性優位の市議会を覆した。
 全米の主要都市でも議会の半数以上が女性となるのはテキサス州ヒューストンやアリゾナ州フェニックスなど少数。ニューヨークの地元メディア「ゴッサミスト」は「史上初めて女性が議会をどう運営し、どんな課題に取り組むかの決定に強い力を持つ」と報じた。

◆マイノリティーの苦境を共有

 リーさんは「立候補は新型コロナがきっかけだった」と話す。韓国系移民の子としてニューヨークで生まれ育ち、同国系コミュニティーの生活改善を目指すNPOを率いてきた。コロナ禍で実感したのは、マイノリティー(人種的少数派)の苦境。都市封鎖で閉店や解雇が続出する中、インターネットが満足に使えず、英語力も低い移民1世らは失業保険や医療サービスにアクセスできない。「以前からあった課題が何倍も悪くなった。私がベストかどうかは分からないが、政治に声を届けるべきだと思った」
 立候補した地元の選挙区は、それまで常に白人男性が選出されてきた。リーさんは「有権者は変化など求めていないのではと心配したが、演説すると多くの人と同じ問題意識を共有できることが分かった」と振り返る。夫も転身を応援してくれたという。

2月、女性議員が6割を占めるニューヨーク市議会の自席で抱負を語る新人議員のリンダ・リーさん

◆教師、看護師…有権者が現場感覚を支持

 ニューヨーク市で女性の政治参加をノウハウや資金面から支える団体の事務局長を務めるジェシカ・ハラーさん(46)は「勝ち残った女性は、ほかにも教師や看護師など多彩な顔ぶれ。それぞれの分野で情熱を持ってきた人が多かった」と指摘する。職業的に政治家を続けることが多い男性候補者に比べ、コロナ禍での選挙戦で現場感覚の豊富さが有権者に支持されたとの見方だ。
 女性が市議会の過半数となったため議長も女性となり、妊産婦死亡率の悪化や男女間の賃金格差など、これまで市政の手が届きにくかった課題を取り上げる動きが生まれている。
 少数派へのヘイトクライム(憎悪犯罪)などに取り組みはじめたリーさんは言う。「日本は女性の政治参加が進まないというが、意欲のある人はまず自分と似た考えを持つ人を見つけることから始めてみては。声を上げるのを怖がる必要はない」

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