ウクライナで民間人避難の「人道回廊」が初めて実現…脱出の留学生は安堵

2022年3月8日 22時38分

8日午前、ウクライナ北東部スムイで、街を出るバスを待つ人たち(ガリーさん撮影)

 【プシェミシル(ポーランド南東部)=谷悠己、ベルリン=蜘手美鶴】ロシア軍が包囲するウクライナ北東部スムイに8日、「人道回廊」が設置され、民間人の退避が始まった。スムイで暮らしていたエジプト人留学生モハメド・ガリーさん(21)が本紙の電話取材に「ようやく街から脱出できた」と明らかにした。
 ウクライナ政府は同日、スムイと南東部マリウポリに人道回廊を設置したと発表した。7日の第3回停戦交渉で合意したとみられ、人道回廊の実現は初めて。
 ウクライナのベレシチュク副首相によると、ロシア、ウクライナ両軍はスムイ周辺で8日午前9時(日本時間午後4時)から午後9時まで停戦し、住民らをロシア軍が占拠していないポルタワまで移送している。
 ウクライナの通信社は同日、中国人留学生とみられる民間人がバスで避難する映像を公開した。ガリーさんもこの日の朝、バスに乗ることができたという。
 マリウポリからザポロジエへの避難も始まったが、ウクライナ側は「ロシア軍が銃撃で移送を妨害している」と主張している。
 ベレシチュク氏は避難の対象を「インドや中国の留学生を含む民間人」と説明。ロシアは両国の留学生が犠牲になるのを恐れ、人道回廊の設置に応じたとみられる。首都キエフでも人道回廊の設置を試みている。
 インドのモディ首相は7日、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領に対して現地のインド人が安全に避難できるよう強く求めていた。ロシア軍の侵攻前、ウクライナでは2万人のインド人が居住。医科大学で学ぶ留学生が多かったとされる。
 国営ロシア通信は、スムイでは35台のバスを使って民間人を避難させるとともに、食料などの緊急支援物資を輸送する見通しだと伝えた。
 ただ、スムイでは7日夜、ロシア軍の空爆があり、子ども2人を含む民間人18人が死亡した。一時停戦の解除後はロシア軍が総攻撃を仕掛ける恐れもある。
 一方、ロシア通信によると、ウクライナで2014年に起きた政変で政権の座を追われ、ロシアに逃亡した親ロ派のヤヌコビッチ元大統領が、ゼレンスキー大統領に対して退陣を求めるメッセージを送った。ロシア政府はヤヌコビッチ氏をウクライナの大統領に据え、傀儡かいらい政権を作る狙いがあるとされる。

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