<11日に考えた>「鎮魂」の不動明王像 震災当日落下の巨岩に彫刻 石工・斎木さん、2年かけ制作

2022年3月11日 07時38分

不動明王像を彫った斎木さん(左)と、地元の塩浦さん=渋川市で

 赤城山麓の渋川市赤城町棚下の「棚下不動の滝」の駐車場に、約二年前に不動明王像が彫られた推定二百トン以上の巨岩がある。十一日に十一年を迎える東日本大震災に伴う震度5強の揺れにより上の崖から落ちた凝灰岩。像には犠牲者への鎮魂や、震災を風化させまいという思いが刻まれている。(池田知之)
 巨岩は高さ四メートル、幅五・五メートル、奥行き六メートル。像はずんぐりむっくりとして、たくましい体格だ。右手に剣を持ち、立て膝を突き、踏ん張る脚には血管が浮かぶ。
 制作者は建設・解体業などの戸部組(沼田市)に勤める石工斎木松雲(本名・日出次)さん(60)。一人で二年間かけ、一九年末に完成させた。斎木さんは「鎮魂の思いを込めた。今まで彫った中で一番大きい作品でもある。石屋冥利(みょうり)に尽きる」と感慨を込める。制作の様子を見守った地元住民の塩浦恒春さん(82)は「最高の出来だよ」と語る。
 斎木さんに制作を託したのは戸部組会長の戸部和明さん(77)。同社は震災で津波被害を受けた岩手県沿岸部の陸前高田市や山田町、野田村でがれき撤去や建物の解体などに当たった。
 滝に近い本堂には、本尊の不動明王が祭られる。戸部さんは不動明王を信仰してきたこともあり、棚下地区の住民に「震災を忘れないため、(自分たちで)彫らせてほしい」と相談。住民側も同意し、制作が決まった。くしくも巨岩が落ちた駐車場は東京電力の土地で、制作は同社に伝えた。
 戸部さんは「今なお行方不明で見つからない人もいる」と震災を風化させたくない思いだ。斎木さんは「(ウクライナでの)戦争も始まり、新型コロナウイルスが収まらない。何とかお不動さんにも頑張ってもらえれば」と手のひらを合わせて祈った。

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