<社説>3・11から11年 廃炉への道のり はるか

2022年3月11日 07時43分
 東京電力による福島第一原発廃炉への「中長期ロードマップ(工程表)」では、当時の政府が事故の「収束」を宣言した二〇一一年十二月から遅くとも四十年で、すべての工程を終えることになっています。
 事故発生から十一年、東電が廃炉作業の最難関と位置付ける燃料デブリの試験的な取り出しを、ようやく年内に、2号機から始めることになりました。
 デブリとは、溶け落ちた核燃料が炉内のがれきと混ざり合い、冷えて固まったもののこと。濃度の高い放射性物質の塊です。
 メルトダウン(炉心溶融)が起きた三基=写真=のうち、水素爆発を免れ、これまでの調査で炉内の状況が比較的明らかになっているのが2号機です。
 とはいえ、人が近づけば一時間で死に至るという強い放射線が飛び交う中、遠隔操作のロボットに頼るしかない“手探り”の作業であることに変わりはありません。

◆デブリは除去できるか

 複数の事故原発の廃炉、解体は史上例がなく、必要な機材も破壊の状況に合わせてゼロから設計、製作しなければなりません。
 爆発で建屋が崩れ落ちた1号機、建屋は健全な2号機、上部が吹き飛んだ3号機、状態はそれぞれに異なります。
 2号機の試験作業には、全長二十二メートル、重さ四・六トンという英国製のロボットアームを用います。
 本来、昨年中に始める予定だったのですが、コロナ禍で製造や輸送がままならず、一年遅れになりました。今は国内の施設で性能試験および操作の訓練中。原子炉側面に開けた穴に“腕”を差し入れ、わずか数グラムの粉末を真空容器に採取して、その性状を確かめます。
 2号機内のデブリは推定約二百トン。三基で計八百八十トンと推計されています。今後約三十年、一日あたり八十キロずつ取り出さなければなりません。実現可能な数字でしょうか。
 このようにデブリの取り出し一つとっても、気の遠くなるような険しい道のりです。たとえ工程表通りに廃炉を完了することができたとしても、莫大(ばくだい)な費用がかかります。
 ロシアによるウクライナの原発に対する攻撃が世界を震撼(しんかん)させる中、とてつもなく危険で、お金がかかる原発という施設のやっかいさ、原発を持つことの恐ろしさについて、あらためて考えずにはいられません。
 原発事故の収束費用は約二十二兆円、このうち東電負担の廃炉費用は八兆円と見積もられてはいるものの、取り出したデブリや解体で生じる廃棄物の処分費用などは、含まれません。
 実際いくらかかるのか。東電に尋ねると、「何をもって『廃炉』とするのか、その最終形が決まっておらず、明確にお答えするのは難しい」との回答でした。
 通常は、運転を終了した原発を解体、撤去し、廃棄物を処理して更地にするまでが「廃炉」です。
 ところが東電の工程表をよく見ると、「使用済み燃料の取り出し開始まで」を第一期、「デブリの取り出し開始まで」を第二期としてはいるものの、それ以降、「廃止措置(廃炉)完了まで」の第三期に関しては、作業開始から「三十〜四十年後」と期限が切られているだけで、具体的に何をするかが書かれていない。十一年たってなお、何をすべきか、いくらかかるか、決められずにいるのです。
 福島と同じ「レベル7」の爆発事故を起こしたチェルノブイリ原発について、ウクライナ議会は事故発生から十二年後の一九九八年に「チェルノブイリ廃炉法」を制定し、「デブリを取り出して敷地を環境上安全な状態にする」と廃炉のゴールを定めた上で、工期を約百年としています。

◆40年は無理、100年スパン

 東電の工程表を現在の技術レベルに照らして見る限り、今後三十年足らずのうちに、跡地や地域を「安全な状態」にできるとは思えません。
 原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「四十年廃炉は無理。百年、二百年という長いスパンで考えるべきだと思う。例えば『石棺方式』といいますか、建屋を丸ごとコンクリートで封じ込め、冷却し、放射線が減衰するのを待ちながら技術開発を進めていくという道筋も考えられる」と、別の選択肢を示します。
 地域、ひいては、この国の未来にかかわる問題です。いずれにしても、工程表を書き換えなければならなくなるのは確かでしょう。

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