東日本大震災11年 「自主避難」の家族に福島県が家賃請求 「弱い者いじめでは」つくばに住む女性が悲痛訴え

2022年3月12日 07時10分

家賃の請求などについて記された福島県の調停資料を手に取る女性=つくば市で

 東京電力福島第一原発事故後に避難指示区域外から「自主避難」し、公務員住宅に入居していた被災者に対し、福島県などが家賃や損害金を請求する事例が各地で起きている。つくば市の女性(42)は裁判所での調停にまで持ち込まれ、「弱い者いじめではないか」と悲痛な声を上げる。(出来田敬司)
 女性は一一年三月まで、福島県南相馬市で暮らしていた。福島第一原発の北二一・五キロ。地震直後に起きた原発の水素爆発を機に、自宅を離れた。知人を頼って茨城県内に逃れ、同年八月につくば市の国家公務員宿舎に入った。
 原発事故から四年がたった二〇一五年春ごろ。女性のもとに福島県の職員が訪ねてきたり、県から文書が届いたりするようになった。家賃は当時は無償だったが、二年後には月額五万四千円を徴収する−との説明だった。
 女性は三人の子どもを育てるシングルマザー。フリーランスの仕事で収入は不安定だ。「(避難指示区域から)強制避難した人は家賃の無償が延長されると聞いた。なぜ平等にならないのだろうか」。絶望的な気持ちになった。その後、二〇年二月に宿舎を退去し、つくば市内で購入した中古住宅に移った。
 二一年十月、福島県から土浦簡裁での調停手続きに持ち込まれた。県の資料によると、請求額は二〇年三月までの三年分で二百八十四万円。「貸付料」は途中で「損害金」と名目が代わり、金額が激増した。築四十年ほどの宿舎に、最後は月額十二万五千円も払わなければならなくなった。調停は今なお続く。
 女性は「支払時期の延期や分割などの話ばかりで、こちらの考え方を聞いてくれない。国や東電から被害を受けたのは私たち。これ以上、避難者をいじめないでほしい」と訴える。

◆「自主避難」住宅無償提供 17年3月で打ち切り

 福島県は2017年3月までで、「自主避難」した被災者に対する住宅の無償提供を打ち切った。「インフラの整備や除染が進み、生活環境が整ってきた」(内堀雅雄知事)のが理由だ。ただ、避難指示区域からの避難者との扱いの違いは反発も招いている。
 避難指示区域は福島第一原発から半径20キロの「半円」が基準。この区域の住民には、国や東電から早期に就労不能、精神的損害や住宅の損害などについて賠償の提示があり、無償の住宅提供も続く。
 一方、区域外からも被ばくを恐れて避難する人は少なくない。15年には約2万5000人に上ったとの推計もある。
 福島県は20年3月、国家公務員宿舎「東雲(しののめ)住宅」(東京都江東区)に入居する4世帯について、家賃の支払いと退去を求めて福島地裁に提訴。こうしたケースは今後も各地で起きるとみられる。

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