<あの日から 東日本大震災11年>横浜からおしゃれに 三陸特産ホヤをPR 卸売業者がレシピ集、英訳版も

2022年3月13日 07時04分

船に乗りホヤ養殖の現場に向かう斎藤さん=いずれも2019年6月、宮城県石巻市の雄勝浜で

 東日本大震災で被災した三陸沿岸で養殖される「ホヤ」の消費拡大を目指し、横浜市の卸売業者がホヤのレシピ集を制作し、その英訳版を先月発行した。「震災から11年、これからが正念場」。国内向けにホヤの魅力を発信するとともに、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、英訳版を持って東南アジアでの販路開拓を目指す予定だ。(石原真樹)
 「横浜から、ホヤをおしゃれに盛り上げたい。少しでも東北の力になれたら」
 こう話すのは市中央卸売市場の卸売業者「横浜丸魚(まるうお)」マーケティング部次長斎藤融さん(53)。ホヤに取り組んだきっかけは二〇一九年五月、宮城県内のホヤ専門店の社長から、「ホヤを横浜で販売できないか」と相談されたことだった。

海中から引き揚げたばかりのホヤ

 さかのぼると、ホヤの第一印象は「磯臭いな」。岩手県で過ごした大学時代、下宿先で「食べてみて」と丸ごと出された時の記憶で、その後も大好物だったわけではない。
 だが、SDGs(持続可能な開発目標)の一つ「海の豊かさを守ろう」を実現しようと、サイズがそろわないなどの理由から出回らない「未利用魚」や、廃棄されるキャベツで育てる「キャベツウニ」の普及に力を入れてきた。ホヤの焼却処分の実態に触れ、「生産したものを焼却するのはおかしい。養殖業を育てることは水産業の持続可能性につながる」と企画に乗り出した。
 現地に何度も足を運び、養殖業者らの話を聞き、シーズンごとにホヤを食べ比べた。旬の夏でもとりわけ身が肉厚になる七〜八月のホヤを急速冷凍し、東北三大祭りの一つ「仙台七夕まつり」にあやかって「七夕ぼや」と名付けた商品をホヤ専門店社長と開発。刺し身やホヤ酢のイメージの強いホヤのさまざまな食べ方を提案しようと、レシピ集を作ることにした。
 ホヤ好きを公言する料理研究家の服部幸応さんの協力を得て、アヒージョやすき焼き、ベーグルなど二十二品を収録したレシピ集が昨年完成した。新型コロナが落ち着いたら、タイやシンガポール、ベトナムでホヤを売り込むときに役立てようと、英訳版も作った。

ホヤのレシピ集。奥は英訳版

 表紙は優しいパステル調で、裏表紙まで広げると牡鹿半島や養殖いかだなど、ホヤが育つ三陸沿岸の風景が広がる。表紙の真ん中に描かれた白い丸はお皿で、「お皿の外の物語を想像してほしい」との思いを込めた。「横浜らしく、おしゃれなものにできた」と斎藤さん。バージョンアップさせ、書店で販売される立派なレシピ本を作るのが次の目標だ。
 横浜丸魚は四月初旬に始める通販サイトでホヤを販売する予定。レシピ集などの問い合わせは同社=電045(459)2876=へ。
<ホヤ> 貝ではなく脊索動物の一種。甘味と苦味の混ざる独特の風味があり、奇抜な見た目から「海のパイナップル」などと呼ばれる。2年半〜3年半かけて養殖される。震災前は宮城県が全国の生産量の8割を誇り、多くを韓国に輸出していた。震災の津波で養殖施設が被害を受けたほか、東京電力福島第一原発事故の影響で韓国が輸入禁止に。2016、17年度に養殖ホヤ約1万5000トンが焼却処分され、東電から補償金が出た。一方で国内の販路開拓が進み、流通網の発達などで首都圏でも鮮度の良いホヤが味わえるようになり、加工品もさまざま開発されている。

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