電極針を体に刺す 肝臓がん焼灼療法 開腹せず再発に強み

2022年3月15日 07時46分

モニターで状況を確認しながら、患者に電極針を刺す堀田医師(右)=名古屋市の増子記念病院で

 国内で年間二万五千人が亡くなる肝臓がん。昨年の診療ガイドライン改定で、腫瘍が三センチ以下、かつ三つ以内なら、外科手術による切除と同等の効果が見込めるとされたのが、焼灼(しょうしゃく)療法だ。皮膚の上から針状の電極を刺し、電磁波の熱で病巣を焼き切る。患者の体の負担が少なく、再発しても繰り返し治療できるのが利点だ。 (植木創太)

◆「切除と同等の効果」患者の負担軽く

 焼灼療法専門の施設として昨年十一月、増子記念病院(名古屋市中村区)にオープンした肝腫瘍局所治療センター。二月中旬、治療に臨んだ七十代の男性は十年ほど前に発症。再発のたびに焼灼療法を受けており、これで四回目という。
 この日は、背中に近い場所にある直径二センチの腫瘍が目標だ。肝・消化器内科の堀田直樹さん(55)は、事前に撮影したコンピューター断層撮影(CT)の画像などで位置を正確に確認。局所麻酔を打って皮膚を数ミリ切った後、直径一・八ミリの電極を刺していった。
 腫瘍近くに達すると電磁波を発生させるスイッチを入れた。時間は十分程度。翌日にはCTで腫瘍の死滅が確認できた。焼灼療法にはラジオ波とマイクロ波があるが、今回使ったのは電子レンジと同じマイクロ波だ。短時間で、広範囲をきれいな球状に焼けるのが特徴。男性は「あまり痛みもないし、入院が三日ほどで済むのもいい」と喜んだ。
 焼灼療法が国内で始まったのは一九九〇年代。開腹して腫瘍を取り除く手術に比べて患者の負担が軽く、肝機能を温存しやすいのが特徴だ。広い範囲を楕円形にゆっくり焼くラジオ波治療が公的医療保険の対象になったのは二〇〇四年。一七年には、従来のマイクロ波より大きく焼くことができ、同院も導入している次世代マイクロ波による治療も適用となった。腫瘍の大きさで違うが、費用は三割負担で四万五千〜六万五千円ほど。順天堂大医学部画像診断・治療学教授で焼灼療法に詳しい椎名秀一朗さん(65)によると、現在は全国千四百以上の施設で実施されている。
 国のがん統計などによると、肝臓がんは年間四万人が発症し、五年生存率は35%。治療しても五年以内に七〜八割が再発する。発症は六十代以降が大半で、原因はC型肝炎を含むウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝による慢性的な炎症などだ。
 全国四十九の病院で〇九〜一五年に治療を受けた三百八人について、五年にわたり観察した研究成果が二一年に発表された。切除とラジオ波による焼灼治療の効果を比較するのが目的。それによると、生存率や、再発せずに生存している期間に有意な差はなかった。同年十月改定の診療ガイドラインでは腫瘍が三センチ以内で三個以下なら、切除と焼灼療法は同等の扱いになった。椎名さんは「進歩が目覚ましい分子標的薬と併用して腫瘍を小さくしてから焼けば、より進行したがんでも根治を目指せる」と話す。
 一方で課題もある。臓器の中で最も大きい肝臓は、腫瘍の位置も形も多様。技術が低いと腫瘍を焼き残したり、血管や周辺の臓器を焼いたりするリスクがある。椎名さんは一月、技術と経験の共有を目指して研究会を設立。国内外にノウハウを発信している。
 肝臓がんは早期に見つければ、焼灼療法をはじめ治療の選択肢は多く、良好な結果が得られる。堀田さんは「肝炎や脂肪肝などがあるなら、ぜひ定期的に検査を受けてほしい」と訴える。

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