<社説>強制不妊で賠償 もう苦しめてはならぬ

2022年3月17日 07時46分
 旧優生保護法(一九四八〜九六年)下の強制不妊手術に対し、東京高裁は明確に「違憲」と断じ、国に賠償を命じた。大阪高裁に続く判決で、高く評価する。すべての被害者の救済に国は一刻も早く乗り出すべきだ。
 「決して人としての価値が低くなったものでも、幸福になる権利を失ったわけでもありません」
 東京高裁の平田豊裁判長は、判決言い渡しの後、こんな所感を読み上げた。同感である。
 旧優生保護法では知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人同意がなくても不妊手術や人工中絶手術ができた。非人道的・差別的な法だったのは明白だ。
 憲法に照らしても、優生手術によって憲法が保障する平等権、幸福になる権利を侵害されたといえる。地裁レベルでも違憲の法律であったことは指摘された。
 難しかったのは不法行為から二十年が経過すると損害賠償を求める権利が消えてしまう「除斥期間」の壁だ。原告の不妊手術は五七年のことだ。東京高裁は五七年を不法行為の起算点としつつも、除斥期間を制限すべき「特段の事情」があると判断した。
 そもそも法自体が差別的思想に基づき正当性を欠くし、生殖機能を奪われ、二重三重に精神的・肉体的苦痛を受けていた。違憲の法律による優生手術の救済を憲法より下位にある民法の「除斥期間」で排除するのはおかしい。
 東京高裁はそのような理由から原告が賠償を求められないのは「著しく正義・公平の理念に反する」とした。大阪高裁とは論法は異なるものの、「時間の壁」を突き破った功績は大きい。
 こんな法律や手術が戦後長く、まかり通ってきたこと自体に驚く。全国九つの地裁・支部で起こされた訴訟の一つだ。今回の判決の意味は広がりをもつはずである。平田裁判長はこうも述べた。
 「(原告には)差別されることなく、これからも幸せに過ごしてもらいたいと願いますが、それを可能にする差別のない社会をつくっていくのは、国はもちろん、社会全体の責任である」
 国は責任を負う。大阪高裁判決に国は上告したが、最高裁で争えば数年かかることもある。被害者は既に高齢であるし、違憲の法だったのだ。国はもはや争うべきではないし、これ以上、苦しめてはならないはずだ。  

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