<歌舞伎評 矢内賢二>歌舞伎座「三月大歌舞伎」ほか 仁左衛門の凄み、小気味よさ

2022年3月18日 07時24分
 歌舞伎座の第二部は「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな) 河内山(こうちやま)」から。片岡仁左衛門の河内山はすっきりとした姿の良さが眼福。「質見世」で木刀を質草に金を貸せと迫る眼光の凄(すご)み、煙草(たばこ)を吸いながら黙って話を聞いている風情。「松江邸」でも上品さを装う中に時折悪党の鋭い本性がのぞき、言葉をたたみかけて松江侯を追い詰めていく呼吸が小気味よい。中村歌六の高木小左衛門、中村鴈治郎の松江出雲守、市川高麗蔵(こまぞう)の宮崎数馬、中村吉之丞の北村大膳と周囲も揃(そろ)って好演。
 「芝浜革財布」は尾上菊五郎の魚屋政五郎。中村時蔵の女房おたつに亭主を案じる真摯(しんし)な情があっていい。
 第三部「信州川中島合戦 輝虎配膳」は中村芝翫(しかん)の長尾輝虎が立派な押し出し。中村魁春の越路はもう少し強さがほしいが、品格があり皮肉の効いた味わい。
 「増補双級巴(ふたつどもえ) 石川五右衛門」は松本幸四郎の五右衛門、中村錦之助の久吉(ひさよし)。幼なじみに返っての二人の弾んだ応酬が楽しく、つづら抜けの宙乗りも鮮やか。錦之助の久吉がぴったりのはまり役で、目のさめるような美しさ。大谷桂三の公家のおかしみが秀逸。
 第一部は「新・三国志 関羽篇(へん)」で、スーパー歌舞伎を歌舞伎座で上演するのは初めて。二十八日(二十二日は休演)まで。
 国立劇場では尾上菊之助が「近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた) 盛綱陣屋(もりつなじんや)」の盛綱に挑んでいる。中では苦衷(くちゅう)のにじむ母微妙(みみょう)とのやりとりに見ごたえがある。中村梅枝の篝火(かがりび)が凜(りん)とした佇(たたず)まいで母の情愛もしっかりと見せる。上演の前に解説が付き、中村萬太郎(まんたろう)が入り組んだあらすじを手際よく伝える。二十七日(二十二日は休演)まで。 (歌舞伎研究家)

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