関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式実行委に都が誓約書要請

2020年5月26日 11時29分

関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼碑に献花し、手を合わせる人たち=2019年9月1日、東京都墨田区の横網町公園で

 関東大震災の混乱の中で虐殺された朝鮮人犠牲者らの追悼式を毎年主催している実行委員会が、会場の公園を管理する東京都から「管理上支障となる行為は行わない」と条件を付した誓約書を出すよう要請され、撤回を求める声明を出した。近年、同じ時間帯に集会を行っている保守系団体と同列の対応を求めるものだとして、ネット上でも「差別を容認している」などと懸念が広がっている。 (安藤恭子)

◆同時開催の保守系団体と同列の扱いに困惑

 「過去の追悼式の運営に瑕疵(かし)がないことは都も認めている。犠牲者を『不逞(ふてい)朝鮮人』などとおとしめ、場を乱してきたもう一つの集会を個別に注意すべきで、同列に扱うのはおかしい」
 例年九月一日に横網町公園(墨田区)で追悼式を開き、今回初めて都から誓約書を求められたという実行委の赤石英夫さん(79)は、困惑を隠さない。

◆40年以上続くのに…都、初めて申請受理の条件に

 一九二三年九月の関東大震災では、朝鮮人が武装蜂起や放火をするといったデマで、自警団や軍隊、警察による殺傷事件が起きた。中央防災会議の報告書は、朝鮮人らの犠牲者数は約十万五千人の震災死者の「1~数%」と指摘している。
 こうした悲劇を踏まえ、横網町公園に七三年、朝鮮人犠牲者追悼碑が建立され、日朝協会東京都連合会などでつくる実行委が四十年以上追悼式を営んできた。
 ところが、実行委によると、都は昨年九月以降、今年の追悼式の申請受理を拒否。十二月には、「公園管理上支障となる行為は行わない」「(拡声器は)集会参加者に聞こえるための必要最小限の音量とする」などの条件を付した誓約書案を示した。守られない場合、中止を含む都の指示に従うことや、次年度以降、許可されなくても「異存ありません」とする内容だ。
 実行委は今月十八日、「本来自由・自主である集会運営を萎縮させる」として、都に誓約書の要請撤回を求める声明を提出した。

◆条件付される理由なく…「積み重ねた歴史壊す」

 異例の都の対応の背景には、デマによる朝鮮人虐殺を否定する保守系団体が二〇一七年から追悼式と同時間帯に「慰霊祭」を開くようになったことがある。都建設局の樽見憲介・適正化推進担当課長は「昨年は会場の付近で、集会の参加者らが衝突してトラブルが起きた。今年は各団体の運営に瑕疵があったかどうかにかかわらず、公園を使用する全ての団体に公平に誓約書をお願いすることにした。公園利用者の安全を確保するため、実行委には誓約書の趣旨を丁寧に説明し、理解を得ていきたい」と説明する。
 赤石さんは「私たちの式典は毎年厳粛に静かに執り行われていて、都から条件を付される理由がない。悲劇を繰り返すまいと積み重ねてきた追悼の歴史が、壊されてしまいかねない」と危ぶむ。歴史を直視しなければ、日韓の親善友好は図れないとし、「都と対話を重ね、従来のやり方で使用許可を得られるよう解決したい」と話す。

◆「#東京都は差別をやめて」ネットで広がる声

 ネット上では実行委への賛同が広がる。小池百合子都知事が二〇一七年以降、歴代知事が行ってきた式典への追悼文送付をやめた経緯もあり、ツイッターには「#東京都は差別をやめて朝鮮人犠牲者追悼式典に占有許可を出せ」と実行委声明を支持するハッシュタグが登場。小池氏あての同趣旨のネット署名への賛同者も八千人を超えた。
 自らもツイッターや署名で賛同した思想家の内田樹氏は「都知事選も迫る中、差別に基づく主張を続ける一部の右派支持者を喜ばせている。社会の分断をあおり、日韓の外交関係にも悪影響を及ぼしかねない行政の対応は許しがたい。検察庁法改正案への抗議でも見られたが、政治的意見を自制してきた層がネットで新たな発信回路を見いだしつつある」と話している。

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