タクシー運転手の過労対策、国際基準より後退して決着 「利用者の安全にも影響」と批判も

2022年3月18日 22時05分
 運輸業界の過労対策を論議している厚生労働省の審議会は18日のタクシー業界の作業部会で、勤務終了後から翌朝の始業までの休息時間について「最低9時間」とする厚労省の報告案を了承した。厚労省が欧州連合(EU)の基準などに合わせて当初提案していた「最低11時間」は罰則がない努力義務にとどまった。バス業界は16日の作業部会で了承している。
 1989年に「最低8時間」と定めて以来の休息時間の見直しだが、1時間の延長にとどまった。運転手の体調不良や過労による事故も増える中、識者からは過労対策としての効果を疑問視する声が出ている。
 運輸業界で最も過労死が多いトラック業界についても、厚労省は「最低9時間」の休息とすることで労使の了承を得る方針。その上で3業種とも2024年4月から適用される。
 この日のタクシー作業部会で労働組合側委員の1人が「休息が9時間だと、往復の通勤や食事などを考慮すれば睡眠不足になる」と改めて「11時間」の義務付けを提案したが、経営側と厚労省は譲らなかった。
 厚労省案に反対声明を出していた日本労働弁護団の水野英樹幹事長は「運転手の健康は乗客や(付近を)通行している人の安全にも影響する。健康や安全より業界事情が優先されたのは残念だ」と批判した。(池尾伸一)


 運輸業界の過労対策 運輸業界には残業時間の上限規制など働き方改革関連法が2024年3月まで猶予されている。残業上限も年960時間と一般企業の720時間より緩い。ただ追加的な過労防止策を講じることも決まっており、休息時間の見直しはこれを受けた対策。厚生労働省は当初、6時間程度の睡眠が必要と判断し「最低?時間」の休息を確保する案を出したが、経営側の反対で、現状の8時間から1時間の延長にとどめる修正案をまとめた。



おすすめ情報

どう守る 仕事 暮らしの新着

記事一覧