東海第二差し止め判決1年 原告団に聞く

2022年3月19日 08時00分
 日本原子力発電東海第二原発(東海村)の運転差し止めを命じた水戸地裁判決から、18日で1年を迎えた。判決は、実効性のある広域避難計画など防災体制の不備を理由としていたが、東海第二の30キロ圏内にある14市町村でこの1年、新たに避難計画を策定したり、策定済みの計画を見直したりした自治体はない。原告団の3人に、東京高裁で今後行われる控訴審の見通しなどを聞いた。(長崎高大)

◆「深層防護」控訴審でも主張 弁護士・尾池誠司さん(53)

 地裁判決は、「深層防護」という考え方を採用したことが画期的だった。原発事故前後の安全対策を五段階に分け、原発自体の事故対策だけでなく、事故が起きてしまった時の対策として避難計画の必要性を認めるという思想だ。
 米国など海外では標準的だが、国内の原発訴訟では重視されてこなかった。「事故は起きない」というベースで考えているから、起きた時のことは考えてこなかったのだ。実際は(福島で)一度起きているのに。実効性のある避難計画ができている原発なんて、日本には一つもない。
 画期的な判決ゆえに、控訴審でも取り入れてもらえるかは未知数だが、この考え方が正しいと主張していく。東海第二原発が首都圏にあり、周辺人口が他の原発より圧倒的に多いという懸念を(裁判官に)共有してもらえるかどうかが大きく影響すると思う。

◆住民理解の重要性、認識を 原告団共同代表・大石光伸さん(64)

 地裁判決は、東海第二原発の地元裁判所が差し止めを命じたことで、地域社会に大きな影響を与えた。避難計画に実効性がなければ再稼働できないと言っており、この一年でそこに焦点が当たるようになった。
 大井川和彦知事も、再稼働の是非を判断する前に「まずは実効性ある計画を策定する」という見解を取らざるを得なくなったし、市町村も容易には策定できなくなった。
 判決は、避難対象人口を考えると実現可能な計画の策定は相当困難とも言っており、控訴審ではこの考え方を確定させることを目指したい。
 原電には、原発を動かす公共的な意義や有益性を地域に説明する活動がほとんどできていないことを指摘したい。地域の中にある企業として、「動かすのは自分たちの自由」というわけにはいかない。地域住民に理解されて初めて動かせるという認識を持ってほしい。

◆戦争リスク 考慮する必要 原告・川澄敏雄さん(73)

 地裁判決をきっかけにいい加減な避難計画は作れなくなり、自治体が新たに策定するハードルは上がった。事故を完全に想定することは不可能で、そもそも計画は作れないと認識するべきだ。計画は立地する東海村でのみ、廃炉を前提に早急に策定するべきだ。
 判決は今後、各地の原発訴訟にもいい影響を与えると思う。一方、原発自体の危険性が認められなかったのは残念だ。巨大な地震や津波にも耐えられるという原電側の言い分を認めているが、東日本大震災を超える災害はいつかは必ず来る。戦争のリスクを考慮する必要もある。これらは控訴審で訴えていく。
 県に対しては、住民の声を直接届ける機会をもっと作ってほしいと要望したい。避難計画も含めて、県が直接住民に説明する場は設けるべきだし、知事が再稼働を判断する際は住民投票も一つの手段だろう。

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