ウクライナ避難民 国内受け入れにハードル 渡航費や生活費に不安「息の長い支援を」

2022年3月20日 06時00分
避難民となった家族らのメッセージを確認するコワレンコさん=東京都内で(我那覇圭撮影)

避難民となった家族らのメッセージを確認するコワレンコさん=東京都内で(我那覇圭撮影)

 ロシアに侵攻されたウクライナ避難民の受け入れを進めようと、日本政府は就労や住居の確保を支援する方針を打ち出した。国内で暮らすウクライナ出身者は「ありがたい」と歓迎するが、日本への渡航は費用負担などでハードルが高く、実際に働き口があるのかや、十分な医療が受けられるのかといった問題もあり、不安は尽きない。

◆渡航費で片道10万円負担

 「病気がちな母らが心配で、毎日泣いていた」。ウクライナの首都キエフ出身で、翻訳の仕事をしながら東京都内で暮らすコワレンコ・セーニャさん(32)は、ロシアの侵攻が始まった約3週間前を振り返った。
 母国に住んでいた母(65)、姉(39)、めい(8)の3人は、侵攻の数日後に隣国のポーランドに列車で逃れた。現地で手配された集合住宅にいったん身を寄せたが、既に避難民であふれていた。滞在をあきらめ、駅で寝泊まりしながら移動を続けているが、行き先は決まっていない。
 コワレンコさんは、まず母を呼び寄せることを決め「短期滞在」の在留資格を得たが、手取りの月収は20万円余りで、片道約10万円の飛行機代が重くのしかかる。昼夜を問わず、ウクライナ語のニュースの翻訳を続けて何とか捻出した。
 4年前にがんを患った母は最近、医師から「再発している恐れがある」と告げられたが、侵攻の混乱で検査の機会を逸した。日本で検査を受けさせたいが、治療費が払えるのか。姉とめいが来日したら、生活費は賄えるのかと気に病む。
 「日本政府の支援には感謝している。ウクライナから人材が入ってくれば日本社会にも貢献できる」と話しつつ「ただ先行きが心配」と表情を曇らせる。

◆医療保険の窓口負担や保険料支払いも

 政府は18日、避難民支援のため▽身元保証人がいなくても特例で入国を認める▽自治体や企業と連携して住居の確保や職業訓練を実施する―といった対策を発表。就労でき、医療保険が適用可能な在留資格「特定活動」への変更も、円滑にできるようにする方針だ。それでも、渡航費の公的支援はなく、医療保険が適用されても窓口負担や保険料の支払いは生じる。
 日本で受け入れたウクライナの避難民は16日現在、73人で今後も増え続ける見通し。NPO法人「難民支援協会」の新島彩子マネージャーは、アフガニスタンやミャンマーの難民受け入れを支援した経験を踏まえ「これまでに比べ政府は格段に迅速な対応を図っている」と説明。一方で「経済力がない人ほど避難しづらい状況にあり、渡航への公的支援はあった方がいい。医療も費用負担の緩和に加え、医療通訳を用意したり、外国人を理由に診療を拒んだりしないよう周知すべきだ。紛争の長期化を見据え、息の長い支援が必要だ」と話した。(我那覇圭)

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